みかんぼうや

マグノリアのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

マグノリア(1999年製作の映画)
3.6
鬼才ポール・トーマス・アンダーソン(PTA)初期の作品。公開直後くらいに一度観たと思っていたのですが、このクライマックスを一度観たら忘れるわけはないので、どうやら初見だったようです。いや、それくらい衝撃のラスト。冷静になるまで、「なんじゃこりゃ!?」とその瞬間の意味が全く分からないほど、それまでの流れから考えるとぶっ飛びまくったクライマックスでした。世の中、そして人生なにが起こるか分からない、ってことですね。ゲロゲ~ロ。

と、その衝撃のラストに啞然とさせられるも、それまでに展開される群像劇は、う~む、どうでしょう。さすがに3時間強は長過ぎで、見どころは色々ある作品なのにちょっとダレました。

作品全体のテイストは好きです。が、まず最初の1時間くらいは9人の主人公たちの物語が入り乱れるかのごとく展開されるので、それぞれの物語はおろか設定や名前も頭に入りづらく、結果としてどの登場人物たちにもいまいち入り込めない状態が続きました(こんなクセある登場人物たちなのに!)。

ですが、1時間たった頃から、徐々にそれぞれの人間関係が繋がりだし、それぞれのストーリーの共通点が親子の捻じれた関係であることも理解でき、そこでようやくこの作品のコンセプトや伝えたい内容が見え始め面白くなっていきました。

が、それでも188分は長く、せめて2時間半くらいでまとまっていれば、もう少し集中して観ることができたように思います。

とはいえ、各人物のストーリーを章立てにするのではなく、同時進行的に各人物のシーンを連続して繋ぎ合わせていく見せ方はスタイリッシュで、人間の欲求やエゴに踏み込んだ内容も、のちのPTA作品に通ずるものがあり、作品全体としては面白かったです。ただ、やはり「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」や「ファントム・スレッド」などは、さらに洗練された映像と人間の狂気性の凄みの表現がこの頃よりも増しているように感じ、私はやはり後発作品のほうが好きなようです。
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