汽笛

ミッドサマーの汽笛のネタバレレビュー・内容・結末

ミッドサマー(2019年製作の映画)
1.3

このレビューはネタバレを含みます

最初によかった点を挙げていくと、(もう散々言い尽くされてる部分ではあるでしょうが)異質さや不気味さ・不穏さの演出。
明るすぎるくらいに明るい画面作りや、余所者にも妙に優しく、文化の違いへの理解度もそれなりに高い村人たち(さすがに先祖の木への立ちションにはキレてましたが)で、言いようのない気持ち悪さを感じさせられたのが新鮮でした。
他にも、ゆったりとした場面から急にインパクトのあるシーンに切り替えるジェットコースター的演出(冒頭の歌→電話のコール、村の風景から飛び降り死体の顔面のアップ)、随所で見られる突き放したようなカメラアングルも印象的で、とにかく画と雰囲気作りの巧みさが素晴らしかったと思います。

以下は悪かった点ですが、ほぼストーリー面です。
大筋のプロットは手垢のつきまくったもので大してひねりもないし、そもそもそのストーリー自体が牛歩で、動きのない時間が長すぎる。開始から1時間経った時点の進捗が村に着いて歓迎されただけって。もし映画館で観ていて周囲の人がいびきをかいていたとしても、この作品に限っては責められないと思います。そのくらいド退屈でした。
その後、飛び降りの儀式のくだりで「急にギア上げてきたな…」と思ったのも束の間、また冗長なシーンの繰り返し。間延びした場面を10分見せられてはオッ、となるカットが1分入るみたいな印象で、正直しんどかったです。まああの間の取り方が先述した独特の雰囲気作りに繋がっているんでしょうけど、にしてももうちょっと巻いてほしかったかな…。根本的に2時間半もいらないですよこの映画。1.5~2時間で足りたと思います。何をトチ狂ったか3時間のDC版もあるらしいですけど、それ観てたら拷問だっただろうなとさえ思ってしまいます。不可解だったシーンの補足があるようですが、とてもじゃないけど観る気は起きません。
ただ、終盤の性の儀式のシーン、およびそれを目撃したダニーに女たちが寄り添い一緒に泣くシーン、そしてそこから数分後の熊の毛皮にクリスチャンが包まれるシーンあたりは正直笑ってしまいました。どれも悲痛さやおぞましさを孕んだ場面なのは頭ではわかっていますが、絵面がバカバカしすぎる。いわゆる「シリアスな笑い」というやつをこの上なく体現していて、非常に面白かったです。

総評としては独特の狂気を楽しむ雰囲気映画だったかなと。しっかり考察すればまた違う見方ができるのかもしれませんが、それはやりたい人がやったらいいと思います。私は結構です。
どうやら監督は次作でコメディを撮りたがっているらしいですが、終盤で光ったシュールレアリスムを存分に発揮してくれれば、確実に面白いものになると思うので、そちらに期待しております。
というかむしろ、この作品をシュールコメディで撮ればよかったのに。その方が絶対に面白かったと思います。
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