ヤドカリ亭

ミッドサマーのヤドカリ亭のレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.2
見終わったとき、吐きそうになってしまった。考えてみるに、このコロニーにあって外の社会に無いものは「生贄」であり、外の社会にあってコロニーに無いものは「家族」なのではないだろうか。

「生贄」の儀式が民族や集団の求心力であった歴史は否定しようもない。それは古代エジプトや500年前のインカ文明に遡る迄もなく、日本の中世における人柱の思想などでも明らかだ。

あるいは中世キリスト教の魔女狩りやナチスのユダヤ人虐殺、中国の文化大革命なども「生贄」の系列に含まれるのかもしれない。

又、「生贄」は支配者の権力維持の道具であった、という言い方もできよう。

そしてこのコロニーでは夫婦と子供で構成される「家族」の様子が全く見受けられない。

「家族」の替わりに個人が繋がる先は集団であり、最も個人的な行為であるはずのSEXでさえも上位者の許可が必要となっている。

その結果、SEXはメンバーが見守る輪の中で、集団の血を繋ぐ擬式として執り行われる。

つまり、家族は解体され、バラバラの個人は集団の階層秩序に吸収され、個人の存在は溶けてなくなる。

しかし私が吐きそうになったのはそれが理由ではない。嫁の言葉が雷鳴と閃光を伴い、私を打ちのめしたからだ。「浮気したら殺す!」

そうです。花冠を冠せられたあの女の、満足感で歪んだ薄ら笑いが原因です。女は怖い😱
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