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ミッドサマーのDYDのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
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ストーリーとしては倦怠期のほぼ末期と言っていいカップルのモンド映画であり、作品の構造としては食人族やグリーンインフェルノと同様、わかりやすい辺境ホラー。

いわゆる西洋近代文明から完全に隔絶された異教徒の村にひょいひょいにこにこルンルンで訪れた若者たちが凄惨な目に合っていく。という、表面的には何の救いもない内容です。

そんなわけなので、物語の冒頭から終わりまで、ある程度予想通りの展開が続きます。もはや散々使いまわされた舞台装置なのでね。

なのだけれども、、、鑑賞後の、この気持ち悪さはなんなんでしょうか。

映画好きの方に怒られそうですが、1日で最後まで観れず二日に分割視聴しました(勝手に二部構成にしちゃってごめんなさいアリアスター監督)

中盤の問題のシーンでギブアップ。途中退場。

何がきつかったって、完全に予想できた展開なはずなのに、何の躊躇もなく、それでいてジリジリと真綿を絞めるようにゆっくり展開されるんですよ。
我々の感覚からすると惨劇でしかないシーンが、何の抵抗もなく、食後のごちそうさまを唱えるごとくシレーーッと提示されるわけです。

きつかったほんと。
全然話聞いてくれないしね、ホルガ村の人たちね。あの話が全然通じない感じ、こちら側の理屈が全く通らない感じ、あれはあれでめちゃくちゃリアルなんですよね。あー、全然やばいところに来ちゃった、取り返しのつかないことになったー、っていうことが明らかになる。
これ、我々もいずれ餌食になるよね、ということが確定する。全て計画通りに進む、という運命。抗えない。おわったーー、っていう絶望感。

その後も、あれよあれよと、ある悲劇が繰り返される。予想はしてたけど、ワンカットワンカットがしんどい。

この映画がやばいのは、シンメトリーな画面や、完璧とも言えるデザイン(キャンバス)の中に狂気がデッサンされてること。白夜に燦々と陽光が照らされる美しい村。絵がとにかく綺麗。その中に、狂ったように祝祭を謳歌する村人たち。錯乱するダニー。バッドトリップ中の悪夢。過呼吸になる描写。ゆらめく木々の不気味さ。

ホルガ村の人々がわかりやすく「原始人的」な様子だったらまだ一線を引けたかもしれないが、ある種身近な白人なのが余計怖い。

終始凄惨な出来事が繰り広げられるわけだが、基本的に優柔不断のクリスチャンがずるずると彼女の関係を継続しつつ、それが「ある悲劇」という形で完結するのが大筋。

同行者の男友達も、なんとも気持ち悪い。なんの結束もないし、みんなバカだし、ラリってるやつもいるし、安直でろくでもない笑

監督からすれば彼らのバカさは織り込み済みだと思うし、ある種の「非家族的」な人たちが「家族的」コミュニティに入っていく過程を描くために必要な要素だったんだろう。
家族的、というのは、悲しいときはみんなで悲しむし、楽しいときはみんなで楽しむ、自己と他者の区別がない世界観。この家族的に気持ち悪さと救いの両面を見事に描ききってる。

彼女らは最終的にホルガ村のシステムに飲み込まれるわけだけど、ダニーたちがハッピーエンドかどうかは正直ジャッジ不能。白夜が終わって、シラフになったあと、ダニーはどうなるのさ。

恐ろしいよまったく。

とんでもない作品でした。ずっと覚悟が決まらずに観れなかったけど、その予感は合ってました(褒めてます)
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