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ミッドサマーのとぽとぽのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
4.5
奇妙。左右対称(鏡)、神の視点(俯瞰)ショットの多用が漂わせる不穏感 & サイケデリック感さながら映像マジックマッシュルームにトリップ酔いしれろ! そして気付いた頃にはもう手遅れ --- 潔癖症か強迫観念的絵作りに作家性が滲み出ているみたいだし美意識も一貫した差異を伴う反復。絵画アートのごとく緻密に計算され、ついつい魅入ってしまう魔力に抗えない。画面の隅々や細かな所まで抜かりなしでその世界観に没入できる作り込まれたビジュアルプレゼン能力。舌巻き目から鱗の想像=創造力・構成力でずーっと不穏。様式美で済むことなくむしろ知れば知るほど戦慄し如何なるレッテルも拒むイメージのるつぼ。はたまたこれはホラー?サスペンス?ミステリー?スリラー?いや恋愛か!例えば前作『へレディタリー継承』で見られたミニチュアショット(と僕が呼ぶもの)は本作でほぼ無いにしろ本作の主人公たちが宿泊する建物は二階が吹き抜けで少し彷彿とさせたし、やはりこの監督の中には「人間は何かもっと大きな(理解を超える)ものの一部である(に過ぎない)」という認識があるのだと思う。
『ウィッカーマン』など枚挙に暇なしな怪村(共同体・集落・儀式)モノの新たなる快作=怪作で、"外面はキレイ中身はエグい"を体現しつつある意味スウェーデン観光宣伝大使(?)。近年で言えば『ゲットアウト』の日常に潜んだ「他人の家に招かれたけど気まずいし心休まらず早く帰りたい」精神を更に突き詰めた感じとでも言うか、綺麗な薔薇には棘(と毒)がある、病める現代人に花束を。凡人の想像を凌駕する最悪と爆笑を掛け合わせる(アン)バランス感覚。牧歌的雰囲気をブチ壊すが如く、これから起こるブッ飛んだことを絵で説明してくれる親切設計。老人儀式やミートパイ、ダンスコンテスト等随所の展開は正直読めるものでもあるのだけど全体通して奇想天外で終盤は圧巻、最後はワケも分からず嗚咽しそうなほどのカタルシス。最後の最後はまさかのまさかでスッキリ吹っ切れるし、ある登場人物の立場になると不思議と前向きな気持ちにもなる。アリ・アスター監督は絶対博識賢いし、神話とかそういうものにも精通詳しそう。若干30歳ちょっととかでこれはヤバい(ホラー)映画新時代の旗手、恐るべし天才の仕事。かち割って頭の中覗いてみたい。ヘイル・アリ・アスター!

↓内容触れます↓
双極性障害の妹=曇りなき者(障害を抱えた)が愛する者に自ら手を下すことで心の雲を取り払いケジメをつけたように、主人公ダニー(ザ・普通!)もなぁなぁ馴れ合いで交際し続けているマンネリ優しい彼氏=愛する(愛した?)者との関係に終止符を打つという同じ関係性が見て取れる(妹:父母=姉:彼氏) --- そう考えると本作のメッセージはある意味、長い陰鬱モヤモヤから解き放たれる方法を儀式という形で体系化(?)しているとも言える。
あとやっぱり爆笑 & トラウマになること必至の三者面談初夜(この時のクリスチャンの顔!)に至れり尽りお花畑。『ホステル』ばりに男の欲とおバカっぽさを体現する(若干この年齢で既に「&」ポジションも頷ける若き才能)ウィル・ポールターに、ドラマ『グッド・プレイス』に続き勉強熱心質問攻めなウィリアム・ジャクソン・ハーパー、そして郷に入るなり不穏な優しめスマイルのペレ。けどやっぱり全てさらけ出すジャック・レイナー(ex. 『シングストリート』『フリーファイア』)! みんな本作を機会にもっとここ日本でも売れるといいね。せーの...あー! あー! あー!!

P.S. ちなみにあの白服装好きっす。探したらあの中にいるかも?※分かりやすいウソです
This high my fire. "What am I going through?" "She's gonna...show me." ア〜ア、ア〜ア、ア〜ア
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