このレビューはネタバレを含みます
すごい作品
絵がとても綺麗だけど色んな意味でグロテスク
悪魔なのはペレでもクリスチャンでも村でもなく主人公のダニー。
彼女こそ本当の邪悪。
彼女はただひたすら自己中心的。そんな彼女が最後に恋人を殺害してスッキリするだけの話。
まず両親への留守電、ここで彼女は妹を心配するような口ぶりだが実際には妹からの返信がない事のストレスをぶつけている。
次にクリスチャンへの電話では妹への扱いについて自分と異なる意見を持つ彼に対してストレスを感じている。
そして無理心中を知った後に号泣してからのクリスチャンとのシーン。泣き崩れるダニーと冷めた目で介抱するクリスチャン。
これはまさにこの映画の象徴となるシーン。一緒に涙を流して共感して欲しいのに愛する人さえしてくれないストレス。
泣き疲れたダニーにクリスチャンはこう声をかける
「気分はどうだい?」
じゃあ共感すれば良かったのか?
そうでは無い事をこの映画が描写しているのが恐ろしい所。
何度か劇中でペレがダニーに「僕は君の気持ちが分かる」と言うシーンがあるがそこにダニーは全く聞く耳を持たないのだ。
"共感を求めるけど自分が納得できる共感じゃないとダメ"
これがダニーの根元。
もう一つ象徴的なシーンがアッテストゥパン。
衝撃的な投身自殺を見ても彼女は悲しみとも言えない微妙な表情になる。(ラストシーンの直前の表情によく似てる)
そして儀式が終わった後に座り込んでいた時にクリスチャンがいつものように話しかける
「気分はどうだい?」
「私みたいな気持ちにならないの?」
「なってるさ。」
2人とももう全くダメだ。
そんなダニーにもついに共感と時が訪れる。
あの村娘たちとの絶叫のシーン。
あそこでダニーはこの映画ではじめて、本当に初めて自分が求める共感をしてくれる相手と出会った。出会ってしまった。
ここダニーは"家族"になった。
そしてラストシーンの笑顔。
色んな解釈があるらしいが僕の解釈は一つ。
共感してくれない奴が死んでよかった!