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ミッドサマーのKのネタバレレビュー・内容・結末

ミッドサマー(2019年製作の映画)
2.4

このレビューはネタバレを含みます

アリ・アスター監督作品を初めて観ました。
何故か途中、デビッドリンチのイレイザーヘッドを思い出しました。

とても強烈な映画です。視覚・聴覚の刺激が絶妙に気持ち悪く、時に見入ってしまう不思議な魅力がありました。

観ていた時は、宗教団体の説明不足さなどに対する心の中でのツッコミが止まらなかった。
投身自殺の場面なんて、飛び降りて、それを見ていたアメリカ、イギリス人は「オイ何をしてるんだ!」とショックを受けます。それに対する宗教の人のコメント「あらやだ、誰も説明していなかったの?ごめんなさいね命は"サイクル"なの」

・・・いや先に説明して!笑

アメリカ文化を知ってるペレ!君は異文化を見ているのだからちゃんと橋渡ししておくれ!「アメリカでは信じられないかも知れないけど好きな人のご飯に陰毛を挟む文化があってね?理解してほしい」とか!
「水分を摂り過ぎるとトイレに行きたくなるよね、もし行きたくなったら、ほらあそこがトイレさ。立ちション?あの木には絶対にダメだよ」とか!!
あとあのSEXシーン、怖いですねぇ、そんな頭上で踊られても、、一緒に喘ぎ出されても、、「赤ちゃんを感じるわ」とか言われても、、、!
そしてラストの生贄志願して村人が燃やされる場面!「〇〇の木から採った。これを飲めば痛みは感じない」、「〇〇の木から採った。苦しみは感じない」→着火。「熱いいいい!」・・・なんだソレっ!筋肉を弛緩させたり幻覚を見せたり性欲を煽るヤクはあるのに!痛覚はどうした!そしてあぁ、村人達よ、何故涙を流すのか。君達が快く生贄に差し出したのだろ?昔何処かの国の将軍が亡くなった時見た泣き方にそっくりだよ、、、

兎にも角にも不気味さと不穏さのオンパレードで、でも笑う余裕もくれない緊張感ある演出で、とても疲れましたよ笑
カルチャーショック。

冷静に、心に焦点を当てて理解していきましょう。
順を追って理解するならば、最後の主人公の笑顔から遡りたいと思います。
最初に主人公ダニーの妹は、双極性障害ということもあってなのか、両親と共に心中してしまいます。
一人暮らしのダニーは凄まじい急性ストレスを受けるわけです。
そしてスウェーデンのコミューンにて、カルト宗教を体験します。
恐らくダニーにとってラストの満面の笑みを浮かべる程、宗教にのめり込んでいった要素は大きく2つあったと思います。
第一に命の価値が、自身の今までの生活環境とは異なるという体験
例えば投身自殺を「サイクル」と認知するシステム。最初はフラッシュバックが出現したダニーですが、ここで死に対する価値を再構成します(トラウマを即再体験させるなんてあんまりだと思いますが)
第二に、異様なまでの共鳴です。彼氏が他の女とやっていたら泣き叫び、村の娘も泣き叫ぶ。投身自殺に失敗すれば、その苦しみに共感するように泣き叫ぶ。
このコミュニティでは一人の感情は皆の感情なのでしょう。性行為のシーンでも皆一緒になって喘いでいましたね。
それを"ファミリー"と称しているのです。そして彼女は最後にファミリーに入った(人の死を怖く思わなくなった、皆と感情を共有出来て孤独感がなくなった)から、笑顔だったのでしょう。

そこまで理解して、それから僕が思う事は、精神的な症状の病理の文化差についてです。
例えばうつ病発症率は先進国が高いという例があるように、文化に左右される節が大きい。
今回の宗教団体においては、上述した、死への価値観と、共同体意識が彼女のパニック発作やらフラッシュバックを消失に導いています。
これが宗教の"救い"ならば、つくづく心のケアとは何か考えさせられるテーマです。
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