シマウマ

ミッドサマーのシマウマのネタバレレビュー・内容・結末

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

友人からフィルマークスにて「日本語吹替版オンライン試写会」を教えてもらった。
「当たったら離れててもみれるね!」と視聴後おそらく受けるだろう衝撃を仲間と共有できると安心し、わくわくして応募。
お察しの通り、私一人が当選し、祝祭を一人で受けることに――――。

そもそもホラーや過剰なスプラッタが苦手な私ですが、なぜか予告映像が頭から離れなかった。
予告から感じた「妙だけど、どこか魅力的でまばゆく怪しい世界」に、まさに“怖いものみたさ”が勝った作品だった。

視聴済みの友人からのアドバイス「視聴後に食べたいものを予定にいれないほうがいい」と聞いたので夕飯のうどんをさっさと食べ終えて挑むことに。
数日前から胃腸炎を患い、視聴当日の朝には家のユニットバスの照明が切れるという、ホラーを見るには実にいい環境が揃った。心身ともに衰弱している。
IKEAのサメをお供に、再生ボタンを押したのだった。


結論、この作品はハッピーエンド!!!


私は孤独で精神的に不安定な主人公が依存先(居所)を変えて、精神が解放され生きながらえる…というハッピーエンドと思った。

しっかし…すげぇもん見てしまった…としばし茫然となった。
感想を書くのにこんなに時間がかかるとは思わなかった…。しかも長い。


物語のプロローグで主人公の状況が描かれる。
元々パニック障害を患っているなか、妹の手によって家族全員が他界。さらに精神が不安定になるが、よりどころは彼氏しかいない。
しかし、その彼氏は優柔不断で我儘。シンプルに言えばクズ。
一緒に居て何が楽しいんだ?と思えるような友人達と一緒に、物語の舞台へ移動する。

いや~~~この時点で不安。もう、再生とめたい。嘘です、なんどか止めた。

いや、止めたのは呼吸を整える意味もありましたが、
めちゃくちゃ構図がいいなって…。(あと要所要所でてくる絵がまず怖い。意味あるよ、あれ…ってどうしても見ちゃう)
主人公と彼氏が言い合う場面や、主人公が彼氏の友人達と会う場面、
それぞれの心の距離感を、対話している相手を鏡に映して画面に同時に入らない構図で壁一枚あるという、“他人事”とわかりやすく表現していた。
なんとなく、彼らは「自分の利害関係でただ一緒にいる」関係なんだろうな、と印象づいた。

彼氏の友人の一人である、ペレがどうしても違和感があった。
主人公が祝祭へ訪れる日は自分の誕生日だと伝えた時、目つきが変わった。
“友人が連れてくる彼女”から何か執着めいたものに変わったと感じた。


物語の節々を感想を書きたいのですが、めちゃくちゃ長くなるし、
視聴中はずっと麻薬を吸って(吸った事ないけど)ふにゃふにゃになった思考回路のままジェットコースターを5周させられた感じ…なので、きっちり言えない。
(メモに「はかだーーーー!」とだけ書いてあったりする)


総じた感想としては、優しいけれど厭らしい…ジリジリ視聴者を追い詰める作品だなと思いました。


展開のキーとなる言葉やアイテムを見せてからイベントが起きる流れで、「もしかして?」と始終頭に要素が残っていく。

恋のまじないタペストリーだったり、
祝祭時の机の配置がルーン文字(大地だったかな)だったり、
ペレの「両親が焼かれた」の台詞であったり、
自分を置いていった彼氏に対して怒りをあらわにした後、場面変わった所で遠くで聞こえた「悲鳴」だったり、
さらりと「それは熊だよ」だったり、

サブリミナル的にキーポイントを映して、第三者である視聴者がホルガの祝祭に対して違和感を感じるが、止めることは出来ない…とじりじり緊張感が募っていく作品でした。


こんな残酷な風習があるホルガは、夏とされる世代になると村を離れる。
ふと、離れた異国の地で「自分の故郷は異常なんだ」と気づかされるのでは…?と、戻る事をやめる人もいるのではと思ったのだが、
本作でも語られていたとおり、彼らの村は、閉鎖的だが一心同体と「同調感」が強い。
誰かの苦しみは、自分の苦しみ。誰かの悲しみは自分の悲しみ…と家族となった者へ同調し感情を共有する。
そういった感覚は、恐らく異国の地に行けば行くほど恋しくなり、愛しい存在に感じるのではないだろうかと思った。

だからこそ、主人公は大きな悲しみを新しくできた関係の人達と同調したことで、彼氏からの依存を離れることができた。

でも、その「同調」は黄色い小屋を燃やした際にわかったとおり、意図して作られた関係であって
(苦しみを感じないとされていたのに、そんなことはなく燃やされた点や、各儀式の前には必ず薬を取り込み感情がコントロールできないようになっている)
大変危険な環境で狂っているが、みんな狂っているから怖くない…という コロニーの在り方を考えさせられた。

一度故郷を離れたり、外部の人間が定期的に取り込んだりしているから、住民も「異常」であることを気づいている。(だから隠す)
でも、この環境へ依存しているんだと感じた。狂気を共有しているからこそ、離れられなくなっている。

あと、祝祭の期間から考えるともしかして数日残ってたりするのだろうか…
白夜のせいか日付感覚がわからなくなってるが… ここも考え所。
祝祭はもしかしたら終わっていない?


しかし、最後の主人公の笑みは、本当に美しかった。狂気に堕ちたんだと、思った。


忘れられない作品になったが、恐らく二度と見ないと思う。
でも、人に勧めてしまう“何か”がこの作品の魅力なんだと思った。