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ミッドサマーのsoritaのネタバレレビュー・内容・結末

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

思わず連日で、二回も見てしまった。
劇場に連日通おうとは思わない作品だけど、配信だからこそできることよね。


2回目で気づくことも多々あり、とにかく全てが繋がっていて、緻密すぎる脚本に感嘆の声しかない。

これはある意味どこまで気づくのかと見るものに挑戦状を出してるのか?

それとも見るものさえ、ダニーのような境地に陥らせようとしてるのか。


彼女は、どの時点でイッてしまったのか。

あきらかに、極最初の部分で、彼女は自分自身を捨て始めている。

ラストは自分を苦しめる煩わしさから解放された喜びそのものだろう。

しかも、自分が手掛けたわけではない。
けど、スウェーデンに来なくても、ダニーはアメリカで、クリスチャンを殺していたと思う。

マークの滑稽な姿のピエロに死装束は、いつも人を小馬鹿にし、思いやりを持てず、謙遜のかけらもなく、しかも中身がない彼にぴったりだった。

威厳を保っているようで、中身がない熊を着せられたクリスチャンもそうだろう。

ジョシュは、優しそうに見えて無関心な男だ。たぶん一番冷淡だろう。

ペレは幾つもの伏線となる言葉を出す。

誕生日に花輪をつけた絵をダニーに贈るけど、それはすでにクイーンへの伏線だろう。


壁やあちこちに書かれた絵が全てを物語っていると思う。
もっと、ゆっくり絵がみたい。

このホラーはなんだろう。

自分たちの神を信じ、その祭儀に疑問をもたないほどの宗教心に対して?

鮮やかすぎる、眩しいほどの情景が誘う狂気?

コロンバイン事件を撮った映画『エレファント』でも、ガス・ヴァン・サント監督が空を待っただけある、"狂気を誘う“まっさらなラムネ色だった。表情を変えずに殺していく主人公と空の対比が、気味が悪く、また美しかった。


ダニーはけして、彼らの宗教に助けられたのではない。
彼らのように、神を信じることはないだろう。

ただ、自分を解放されたことへの喜びに満ち溢れてるだけなのだ。

コミュニティに残ったとしても、彼女は躁鬱を繰り返し、そのたびに共に泣いてくれる仲間たちが、気を紛らわせてくれるのだろう。

いつか、生きることに絶望してることに気づいてしまった彼女が戻るまでは。

また、喜びのまま、永遠のサイクルに身を捧げ、生き直しができると信じ、次の子にダニーと名付けられるまでは。

でも、きっと彼女は若いうちに、あの崖から落ち、解放されることを望むのではないか。

そんな気がする。

怖いのは、わたしたち誰もの心の中に、
闇はあり、ほんのちょっとのタイミングの違いで、落ちることもあれば落ちないこともある。

それはまるで、ずっと照り続ける夏至の太陽のように、暗闇が来ることを気づかされないでいるだけかもしれない。

観賞後、とても気分が悪いときいたが、それよりも考えさせられた。
苦しめるものからの解放について、人はどうすることがよいのか。

余談だが、この撮影後すぐに『若草物語』に入ったフローレンス・ピューの切り替えがすごい。

しかし、その撮影に救われたんじゃないだろうか。わかんないけどね。
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