三樹夫

ミッション:8ミニッツの三樹夫のネタバレレビュー・内容・結末

ミッション:8ミニッツ(2011年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

ループものというだけではなく構造的にも『恋はデジャ・ブ』を換骨奪胎している作品だ。『恋はデジャ・ブ』は利己的な主人公が利他的な行いをし、人間性の成長によりループから脱出していた。この映画のループ脱出はどうだったかというと、表層的にはヴェラ・ファーミガが機械のスイッチを押したからだが、映画の構造としては主人公の父親との関係とそれまでテロの容疑者として疑っていた赤の他人の乗客を意味はないかもしれないが爆発から救いたいと思い、最後は乗客全員を笑顔にすることが出来たのでループからの脱出となっていると、『恋はデジャ・ブ』と同じ構造になっている。乗客全員の笑顔を持ってループからの脱出となる画は感動的だ。
ただいきなり笑わしてみろから即興で乗客全員を笑顔にするという、ジェイク・ギレンホールも頑張ったけど結局あのコメディアンが凄いだけじゃねと、この映画はちょくちょく粗がある。序盤の次のテロの危険が迫っていて説明している時間がないので有無を言わさずジェイク・ギレンホールをループに放り込むというのも無理矢理感がある。ヴェラ・ファーミガと博士は説明しなさ過ぎやろ。しかも説明できる時間あるし、説明して内容を理解した上でジェイク・ギレンホールがループして犯人捜しした方が絶対手っ取り早い。これは主人公は一体何をさせられているんだと、観ている者を引き付けるためのフックという脚本上の都合ためだけに序盤は説明を省いているのが丸わかりで、キャラクターが不自然な行動になっており作為的なのが目立つ。それでも感動的な画でなんとなく細かいことは気にならなくなったり、約90分の短い本編で疑問に駆られる前に次の展開に移行するなどされている。

最後はパラレルワールドにジェイク・ギレンホールの魂は移行してそこで生きていく。ただしジェイク・ギレンホールが乗り移った身体の持ち主の魂は消滅している。メールを受け取ったヴェラ・ファーミガは、元の世界線のヴェラ・ファーミガではなく、パラレルワールドのヴェラ・ファーミガだ。
ただこれは蛇足もいいとこで、乗客全員が笑顔になった画で終わっていた方が綺麗だった。

主人公が別人で見知らぬ列車内にいるのは何故、ループさせられているのは何故、テロの犯人は誰とフックを次々散りばめ観る者を引き付ける。テロ犯人は結構早い段階で見つかるが、その後もツイストがありまさかの感動的な展開へ入っていくという、全体的にツイストの効いた映画で観ていて飽きない。
この話が『ブラック・ミラー』のワンエピソードとして映像化されたらもの凄く暗黒な話になっていただろうなと思う。本人の意思に反してループさせまくったろは酷すぎる。そこら辺はゴールが感動話なことで、上手いことなかったことにされている。粗よりも、感動でシュガーコーティングしている方が個人的には引っかかった。キスしてハッピーエンドだが、キスの仕方も一方的だし。人生のベストとか年間ベストとかには入らないけども、観終わった後に楽しかったなとなる佳作ではある。
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