そーた

ミッション:8ミニッツのそーたのレビュー・感想・評価

ミッション:8ミニッツ(2011年製作の映画)
4.2
恩人のような映画

ある時期に映画を全く見なくなった事があって、
それでも今のように映画をまた見始めるようになったのって、
紛れもなくこの作品のおかげ。

そんな恩人のような映画のレビューをいまこうして書いているけれど、
この映画に出会わなければ日々レビューを書くことすらなかったんだろうな。

ふと自分の選択如何で開かれた未来への筋書きがどんな風にでも変わるんだと思うと、
とても変な気持ちになってしまう。

それと幾分か似た不思議な感覚を、
量子力学の奇妙なアイディアに結び付けて、
緊迫感のあるタイムループ型サスペンスとして仕上げたこの作品。

量子力学の多世界解釈をさらりと前向きなメッセージとして転化する類稀なセンスの良さを、
ジェイク・ギレンホールのもつ溢れ出る人間味に纏わせて出来た新感覚なSF。

迫り来るテロを未然に防ぐべく何度もループを繰り返す陸軍大尉が辿り着いた真実が、彼をある決断へと導いていく。

その決断を僕ら観客が優しく後押ししたくなってしまうのは、
やはり脚本のうまさなんだと思う。

8分間という限られた時間内で犯人の正体を暴こうと何度も車内を奔走する主人公の既視感。

それを追体験する僕ら観客が映画に没入していく感じが、
何度も何度も同じ"8分間"に挑み続ける大尉の姿とリンクしてしまう。

こんな妙な感覚の一致が主人公への共感を生み出し、
結末を温かく見守ろうと思わず後押ししてしまうんだろうな。

そして何より、
ジェイク・ギレンホールのいい奴っぷりがやたらと印象に残ってしまうのは終盤に用意された仕掛けのせい。

思わずはっとなるその演出こそがこの映画の最大の見所であるならば、
じわりじわりと感動を呼ぶあのシーンにジェイク・ギレンホールって人の素の人間性を見出だせたような気がして気持ちがよい。

見てよかったと心に強い印象を残すこのSF。
僕は非常に好み。

というか、やはり恩人なんだなぁ。

映画の面白さを思い出させてくれて、
ありがとう。

ループする僕の映画人生はこれからも続いていく。
そーた

そーた