TaiRa

ペイン・アンド・グローリーのTaiRaのレビュー・感想・評価

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アルモドバルの自伝的な映画なのだけど、とにかく体調が悪いという事がリアルに描かれていて面白かった。

体中のあちこちにガタが来て満身創痍の映画監督が主人公。冒頭に分かりやすく症状の解説をしてくれる。背骨が曲がらないという症状を体現するバンデラスの演技も素晴らしい。本当に身体が痛そう。いわゆる『8 1/2』系のスランプ監督の人生振り返り映画なのだけど、混沌とか錯乱とは無縁でとても丁寧に過去と向き合っていく。ヘロインの助けも借りつつ。わだかまりのある俳優との和解、元恋人との再会、母の想い出と死、少年期の目覚め、と過去を振り返っていく。映画監督が自伝的作品を作ること自体を客体化した構成も面白い。母親についての映画をよく撮っている印象のアルモドバルが、そのこと自体を映画にしている感じ。我々が観ているものが一体何なのか、改めて考えさせる作用がある。他者の個人的な想い出の再現を観る、とは。劇中で母親を演じているペネロペ・クルスを見て、彼女がとっくに「中年女性」になっていたことに今更気付く。相変わらず年齢感の奥行きはバグってるんだけど。少年期編に登場する美青年の美しさが彫刻品みたいで凄い。「目覚め」の場面もシンプルながら気が利いてて良かった。今回も衣装や美術のカラーコーディネートが美しい。本筋とあんま関係ないけど、街中で物騒な喧嘩を目撃するとこ何か唐突で好き。
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