708

ペイン・アンド・グローリーの708のネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

ペドロ・アルモドバルの自伝的作品。アントニオ・バンデラスがアルモドバルに当たる世界的な映画監督サルバドールに扮してます。アルモドバルの人生の回顧録というか、記憶の走馬灯というか。年齢を重ねたバンデラスはギトギトした脂っぽさが抜けた円熟味が、とても味わい深いです。そして、ペネロペ・クルスは美しい。

アルモドバルの作品は赤のイメージが強いというか、自分の中では「アルモドバル・レッド」という赤い色があると思っていて、この作品でも「アルモドバル・レッド」がふんだんに盛り込まれてました。特に印象的だったのがサルバドールの家のキッチン。赤のキッチンとブルーのタイルとのコントラストがとても美しくて、サルバドール家のインテリアすべてに見とれました。

痛みと栄光、まさにアルモドバルの光と陰が描かれていて、アルモドバルの成功の裏には痛みが伴っていたんだなと。毎回の作品の熱量の高さを考えると、納得できてしまいました。病気のことや昔の恋人とのこと、母親とのこと、子供時代のこと、初めての性の目覚めなども赤裸々に盛り込んでいて、ドラマチックに描こうと思えばいくらでもできちゃうことをシンプルに描いていて、その温度加減がよかったです。昔の恋人と再会するエピソードに胸を打たれました。ただ、子ども時代のサルバドールが性に目覚める水浴シーンで、ボカシが入っていたことが超残念。別に性的な描写ではないただの裸で、水を浴びているだけなのに。

この映画でのワンシーンかと思ったら、自伝映画を撮る劇中劇になっているという仕掛けのラストシーンがいい余韻を残してくれます。
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