ちゃむ

82年生まれ、キム・ジヨンのちゃむのレビュー・感想・評価

82年生まれ、キム・ジヨン(2019年製作の映画)
4.8
「夫が育児を手伝う」
「姑が嫁にエプロンを贈る」
こんな描写に、違和感を持てる人はどれだけいるだろうか。

コンユが最初から最後までジヨンの味方なのと、義母・義姉があくまでも親切な人たちだという演出は、強烈に効果的だった。一応、彼らなりにジヨンを愛していることが分かるからこそ、固定観念の恐ろしさが立ち現れるのだ。

なぜ「妻が育児を手伝う」でないのか?
なぜ「息子にエプロンを贈る」でないのか?

もしここで典型的な悪役が登場すれば、ジヨンの苦しみはその特定個人に起因されてしまう。観客の内側に潜んでいる固定観念は、発見されることなく根を張ってしまう。

別の視点で言えば、"働く女性"が当たり前になった今日の社会では、むしろ女の子ほど「働くことが偉い」「家庭に入るのはもったいない」というバイアスを持っている気がする(かく言う自分がそうだった)。

でもそのバイアスって、もはや男女の問題ではなくて、ケアする人(家事、育児、介護などをする人)に対する価値づけの問題なんだと思う。だからこそ、今度は「育休を取れない」「家族と時間を過ごせない」という男性の生きづらさも、垣間見えてしまうのだ。

女子大生の自分が観ても目から鱗だった本作。わたしはむしろ、固定観念で自分の可能性を狭めているかもしれない、若い女の子たちに観てほしい。
そして、「女性の生きづらさを男性も分かってよ!」という単純な男女二項対立で本作を評してほしくない。
女性の中にも偏見があること、それに気づける映画でした。
ちゃむ

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