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フェアウェルのzomychanのネタバレレビュー・内容・結末

フェアウェル(2019年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

ナイナイに病気のことを言うべきか、言わざるべきか。親戚一同で病気を隠す決断に疑問を持ち続けている主人公ビリーへの、おじさんの言葉が妙に印象的。「西洋では命は個人の所有だが、東洋では家族のもの」というような言い方だっただろうか。

でもビリーが納得していないのは、そういう理由ではなかった。私にはナイナイに病気のことを伝えるか否かというお話というより、ビリーがナイナイの余命宣告を通して、家族や親戚との関わり方や、ひとりの子ども/人間としての自分のあり方、今後の自分の居場所を探しているお話だったんじゃないかな、と思った。

ビリーが「アメリカに来たことを自分にとっていいことだと思いたかった」というような言葉が、彼女の気持ちを表すとても切実な表現だったと思う。

人生の大半をアメリカで過ごしながら30歳にして奨学金にも落ち前途多難な中、心の故郷とも呼べる祖母ナイナイの余命宣告。この機会にナイナイに会いに行くことも、祖父が亡くなったときに中国に帰ることも、このままナイナイと中国に残って世話をすることも、全て親に反対された。アメリカでの生活では両親がいつも不安そうだったと直接母親に泣きながら言っていたのも辛かったなぁ。子どもとしての自分の気持ちを抑え込んでいたんだろうか。。。

ビリーと同じように自分のホームを探していて、自分のアイデンティティはどこにあるのか、これからどことつながっていくのかという疑問を持っている人が見たらヒントをもらえるんじゃないだろうか。

そしてビリーを演じたオークワフィナの、ずっと何にも納得していない表情が絶妙だった。それだけで終わらず泣いたりふざけたりして繊細な演技もあってよかった…。

年長者の押しの強さ(結婚式の食事のロブスターがナイナイの抗議によりカニに変更)、嫁姑問題(ビリー母のナイナイへのいらだち)、親戚の各家庭の方針の違い(ビリー母とビリーおば?が子供をアメリカへ送ることについて全員がいる場で言い争いのようになる)、親戚がいっぱいいて(今回は主言語が異なることもあり)話に最初からついていかない人がいるなど、親戚あるあるも盛り沢山なのは楽しかったかも。どこのウチにもあるよね〜。
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