どらどら

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコのどらどらのレビュー・感想・評価

4.5
- It’s not your loss. It’s San Francisco’s.

家族の歴史、街の歴史、国の歴史
厳然たる格差という名の差別
不条理に襲い掛かり続ける暴力
黒人は町から消され、掃き溜めに捨てられる
例外なく、無感情に作用する、残酷なシステム

この映画は教えてくれる
差別から「逃げる」ことは臆病なんかじゃない
ましてや、負けなんかじゃない
負けたのは、街で国で、なによりそのシステムだ

家族の歴史に、土地に、家に、固執する必要なんてない
そんなものの呪縛を解き放て
ただ、生きているということ、そして変わらないもの
あなたは、あなたとして、現在と未来を生きる
荒波に、漕ぎ出せ

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A24×Plan B、製作総指揮にブラッドピットを加えた意欲作

かつては日系人/黒人が作ってきた街が、白人のものとなり、マイノリティが郊外に押しやられる現実
表面上は取り繕っても消えない差別、何より格差という暴力、そして、純然たる暴力自身
アメリカの負の側面に立ち向かうこの映画は、過去多くの映画が挑戦したようには差別と戦うことを要請しない。
差別が起きているこの現実こそが負けなのであり、そこから逃げることは決して負けではないと力強く語る。
その新しさに、魅せられた。

一人芝居のシーンの迫力に、胸を打たれる。物語化される死への抵抗、そしてそこに生きた一人一人の人生とその多面性の完全な肯定。この一人一人の「小さな物語」こそ、映画という媒体が語るべきものだと改めて気付かされる。

「逃げる」ことをめぐる二つのエピソード
白人露出狂の男性とそれを囃し立てる若者集団
ブラックコミュニティの持つ排外性と暴力性
サンフランシスコの街の光から遠く離れたところで、ボロボロの車で夜を越す男性
パンクな白人女性と主人公の会話

さまざまな示唆的なエピソードを交えながら、この差別社会における生の完全な肯定。それをこの説得力で成し遂げる、新人監督とは思えない手腕に脱帽。
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