ヘソの曲り角

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコのヘソの曲り角のレビュー・感想・評価

1.5
ゆるーい独特なノリのストリートカルチャーものかと思ってたら結末はその反対の地元や家や親友から離れる、「大人になる」ことについての話だった。が、この物語の一番のポイントの「この家は1946年に先祖が自らの手で建てたものである」という言い伝えの物語上での作用が個人的には致命的にズレていると思った。例えば「ヘイトフル・エイト」でサミュエル・L・ジャクソンが何度も出すリンカン大統領からの手紙、これの信憑性は甚だ薄いのだがその出どころの真偽の定かでない手紙から作り出される物語に関して疑いの余地はないのだ。物語が信じられるかどうかは問題でなく、その物語がある意味を受け止めなければならない。大人になる、ということに関してのこのズレは本当に切実な問題だと思う。この映画の恐ろしく現代的な感覚からくるキャッチーさは計り知れないが現代というものを装うだけに留まっている気がする。やたら鳴ってる音楽も突如始まる現代演劇も「エモい」映像質感も、それらは映画を飾りたてることこそすれど質量を生み出すことはおよそないのである。

最近は男二人が仲良いとすぐ恋人にしがちだが本作のふたりはあくまで「親友」でありはっきりと明言していないところがいいと思った。その淡さは必要だと思う。