jam

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコのjamのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

自分が拠り所にしているもの

人は"帰りたい"と言う
何処へ?
それは自分にとって一番安らげる場所


迷子の子どものみならず、病気で入院している患者さん、認知症の高齢の方、みなさん口を揃えて"家に帰りたい"と。


ジミーにとっての"帰りたい家"
祖父が第二次大戦後に土地を買って建てた
トンガリ屋根の家

坂の多い街 サンフランシスコでも
ひときわ瀟洒な美しい佇まい
パイプオルガン 猫足のバスタブ
古い本棚にはディケンズの本

今は家族のものではないこの家に
"帰りたい"と願うこと
しあわせな時代を懐かしみ
取り戻したいという想い


鬱屈した毎日のなかで
いつしかそれがジミーの心の拠り所に


そんなジミーにそっと寄り添うモント
祖父と暮らす彼の家は雑然としているけれど
私の目には温もりにあふれた"帰りたい家"に見える


売りに出されたあの家を買い戻したいけれど

俺は若いし 黒人だし
一番高い金利でいいから
なんとかして全額返すから

必死に訴えても400万ドルは夢のまた夢…

あの家を取り戻すことは
バラバラになった家族を取り戻すこと

ジミーの想いをずっと支えてきたモントの
ほんとうの"友情"


泣き笑いの一人芝居

くたばれサンフランシスコ
この街は死んでる クソな街だよね
街を愛してる? 憎まないで

愛と憎しみは一体だ


モントに知らされるまでもなく
祖父が建てたのではなかったという事実

長い間言い続けているうちに
嘘を信じかけていた…

家を取り戻すということが
変わってしまったサンフランシスコへの
ささやかな抵抗だとジミーはわかっていたのではないか、そんなふうに思う

スケボーを壊して
自分の足で、確かな一歩を踏み出す
そばには頼りになるモントはいないかもしれないけれど
旅立つジミーの胸の中には
モントのグリーンの家があるから
jam

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