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TENET テネットのCozyのレビュー・感想・評価

TENET テネット(2020年製作の映画)
4.0
「メメント」「ダークナイト」「インセプション」「インターステラー」「ダンケルク」といったノーラン作品を愛するファンの一人として,今回の「TENET テネット」の公開を凄く楽しみにしていました。

結論から言うと「TENET テネット」は自分にはイマイチ合いませんでした。確かに今作のアイディアや見せ方,撮影技術などは相変わらずのノーラン節だと思いましたし,少々辻褄が合わなかったとしても,力技で捻じ伏せる感じもいつもどおりだなぁと,観ていて微笑ましかったのですが…

個人的にノーラン作品のどこが好きかというと,様々なアイディアや設定,撮影機材や技術・特撮などを駆使して,こちらの感情に強く訴えかけてくるところなんですよね。以前ツイッターで相互フォローしている方とノーランの話題になった際に,「ノーランはロジカルに見られがちだけど,実は凄くエモーショナルな作家だ」と意見が一致したことがとても印象的でした。つまりノーラン作品の特徴とも言える「アイディア・設定・見せ方・技術・特撮」などはあくまでも手段に過ぎず,それらを用いて観客の感情に訴えかけてくることがノーランの目的なのだろういうのが自分の認識だったのです。

翻って今回の「TENET テネット」ですが,今まで手段だと捉えていたものが作品の目的のように思えてしまい,自分の感情がこれまでのノーラン作品のように揺さぶられなかったのです。確かにアイディアと撮影は驚きました。特にカーチェイスのシーンなんかは情報量が凄まじくて,色々な伏線なども盛り込まれていましたが,結局観終わった時に「ノーランはこの作品で一体何を伝えたかったのだろう?」と思ってしまい,「インセプション」や「インターステラー」のような余韻を味わうことができませんでした。

勿論メインキャストの演技(特に主演のジョン・デヴィッド・ワシントン)は全員素晴らしかったですし,007オマージュなども楽しかったんですけどね。
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