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TENET テネットのMarkのレビュー・感想・評価

TENET テネット(2020年製作の映画)
5.0
最も緻密で難解。そこが最高に面白い。
時間の流れ方の向きのみに着目し、これほど壮大なストーリーに発展させられるのかと驚かせられる。
クリストファー・ノーラン監督の作品はどれも一つのテーマを掘り下げに掘り下げ、壮大なストーリーを紡いでくれますが、TENETはその中でも特に限定的なテーマで紡がれているにもかかわらず、今までで一番複雑で理解に苦労する作品だったと私は思う。

映画視聴後に「面白かったが、あのシーンはどういうことだったんだ……」と気になり始めるシーンが次々と湧いてきて、一緒に映画を見た友人と考察や理解のすり合わせをする、非常に心地よい時間を提供してくれること間違いない。
今視聴する場合はDVDやサブスクで見ることが多いかと思おうが、一度、一時停止や巻き戻し機能を使うことなく、最後まで試聴してみて改めて内容を整理する時間を設けてもらえたら私としては非常に嬉しい。
私自身、今回でTENETを視聴するのは4回目になるが、その度新しい発見があり、最序盤から盛り込まれた初見では決して気づくことのできないような伏線や、簡単には分からないキャラクターの関係性に感動させられることばかりだ。
あまり言及はしないが、どのキャラクターも曲がることのない信念や正義を持っており、仕掛け以外の点に着目しても十分に楽しめる内容になっていた。

一度で理解しきれない難解な内容が魅力的なこともさることながら、逆行する存在と巡行する存在が同時に画面内に存在する映像は、理解不能な新しい映像体験を確実に与えてくれるだろう。
無論、毎度お馴染みノーラン監督のリアル主義から繰り出される、「やりすぎだろー!!」と思うようなCG不使用の映像も忘れてはいけないとは思うが。
また、前から読んでも後ろから読んでもTENETなように、音楽も逆再生バージョンが公開されていて、見てからそういった制作秘話やさりげないメッセージを知ると非常に興奮させられる。

かなりの想像力と集中力がなければ中々理解しづらい作品で、暇つぶしに見るには向かない作品だが、内容は非常に緻密に練られており、見れば見るほど良さを感じる作品だ。もちろん、終盤に準備されているド派手な映像を楽しむだけでも十分満足のいくことだろう。

私は劇場で映画を見終わった後、聞こえてきたエスカレーターの駆動音などがグワングワンと聞こえて、まるでBGMが流れているかの様に感じてしまうという。なかなかイタい影響の受け方を密かにしてしまうほどいい作品だった。
現時点で私が選ぶ一番好きな映画。
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