このレビューはネタバレを含みます
独自の逆行ルールで世界を滅亡から救え!
この映画は謎のキーワード「テネット」と4つのルールが設定された逆行装置を使い、悪と戦うというストーリーだ。
ルールその1
装置に入るときは先に逆行した自分の姿を確認する事。
ルールその2
外気は肺に取り込めない。酸素ボンベを外すな。
ルールその3
生身で過去の自分に触れるな。消滅する。
ルールその4
熱も反転する。火の熱さは氷の冷たさになる
しかしこのルールが生かされているシーンがあまりにも少ない。
それぞれルール作ったし一回は回収しとくかという程度。
この作品で重要視されているのは、タイムパラドックスが起きる事による人物の行動や思考のねじれではないと感じた。
時間操作系の名作は沢山ある。
トライアンドエラーで解決を目指す「バタフライ・エフェクト」
自分が自分に陥れられる悲壮感とやるせなさを存分に味あわせた「プリデスティネーション」
いくら名匠クリストファー・ノーランと言えどやり尽くされた手法では面白い作品は作れない。
だから彼は時間の順行と逆行を同時に表現するという新しい視覚体験で勝負したのだと思う。
以前ダンケルクのインタビューでノーランが語った中に印象深い言葉がある。
「全ての映画がそうあるべきだとは思わないが、映画の醍醐味は感情が揺さぶられる体験だ」
ノーランは徹底した実写主義者として有名だ。
そんな彼が時間の逆行という、現実では起こり得ない事象を映画で表現した。
だからこそ信じられないくらいの労力がかかっているであろう1シーンに感動する。
捨てカットなんていうものはない。
観た人の記憶に残る1カットを作り出し、それを共有するのがこの映画の楽しみ方ではないだろうか。