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TENET テネットのEDDIEのレビュー・感想・評価

TENET テネット(2020年製作の映画)
4.3
時間の順行と逆行。もはや理解不能の展開の連続に息をつく間もない。ただし観るものを引きつけるCGなしの演出や見慣れない逆再生アクションに夢中になること必至。あっという間に150分が過ぎていく極上の映画体験。ノーランの集大成を刮目せよ。

久々の映画ファンお祭り騒ぎ案件でしたね。0時からの最速上映なんていつぶりでしょうか。かく言う私は何の変哲もない日曜日の夕方に観てきたわけですが、とにかくとんでもない映像体験をさせられたという感覚。もちろんいい意味ですよ。
多くの方がレビューで書かれているように“意味不明”な部分が多く、上映後は様々な考察記事が飛び交っています。

だけども「考えるより感じろ」と当のノーラン監督ご本人からのお達しもあり、まずは映画そのものを楽しむことを優先してきました。
考え始めると脳汁がぶち撒けられるような感覚に陥り、もはや頭が追いつかなくなるので、とにかく映像とアクションと音楽という映画そのものに没入。いやはや、凄いですよこれは。
正直ストーリーそのものはこれまでのノーラン作品の中でも随一の薄っぺらさだと思うんです。人物の背景描写とか、マスク装着のせいで誰が誰だかわからないとか。
だけど、“楽しい”んですよ!

逆行するアクション、魅せる演出、豪快な爆発、逆行弾の存在、ワクワクする挟み撃ち作戦なとなど。とにかく150分という長いはずの上映時間をダレることなく、最後まで集中力が継続。
音楽はクリストファー・ノーラン作品常連のハンス・ジマーではなく、ルドウィグ・ゴランソンだったんですが、この人の劇伴がまた最高なんです。「クリード」シリーズや「ブラックパンサー」を担当していた実績ある方なので何も心配はしていませんでしたが、彼の音楽あってこその終始緊張感が続いていたと言っても過言ではないでしょう。もちろんApple Musicですぐさまサントラをダウンロードしました。

難しい考察は他の得意な方にお任せして、ネタバレしない範囲でこの作品の魅力を伝えるとすると…初めてテーマパークで大迫力なアトラクションを体験した時のような感覚です。私は高校生の頃にUSJでスパイダーマンの3Dアトラクションを初体験した時に興奮が隠せませんでした。
本作はとにかく映画を“見る”とか“観る”ですらなく、完全に“体験する”なんですよね。そういう意味でいうと『1917』にも近いところがあるかもしれません。
逆にストーリー重視で作品の優劣が決まる方には合わないかもしれませんね。

あとはヒロインであるキャット役を演じたエリザベス・デビッキの美しさがとんでもないことになっています。彼女の美貌は天井知らずというか、他の作品でも美しさは勿論際立っているんですが、本作は彼女でなくてはならなかったかのような配役なんですね。それもそのはず、ノーラン監督はヒロイン像を彼女と想定して脚本を執筆したそうなんです。彼女の長い手脚が映える演出も数多く、本作をきっかけに彼女のファンが増えることは間違いないと思っています。

予告編で流れていた範囲で語るとすれば、やはりあのカーチェイスのシーンはたまりませんでしたね。あそこが一番の見せ場だったんじゃないでしょうか。もちろんクライマックスもとんでもないんですけどね。

主人公の名もなき男役は近年注目度の高まっているジョン・デビッド・ワシントン。謎のマスク男との格闘シーンは最高の見せ場でした。
また新生『ザ・バットマン』でブルース・ウェイン役に抜擢されたロバート・パティンソンが名もなき男の相棒ニール役。正直『トワイライト』シリーズではあまり好きではなかったんですが、本作で彼の魅力は本領発揮していましたね。滅茶苦茶カッコ良かったです。

細かいところまで語り始めるとネタバレを踏んでしまいそうなのでここいらで留めておきます。評価は分かれるかもしれませんが、間違いなく2020年を代表する作品の一つとなるでしょう。
今回はドルビーシネマで鑑賞したので、2回目鑑賞でIMAXレーザーで再度“体験”してこようと思います。

◆2回目鑑賞@109シネマズ大阪エキスポシティ(2020/9/23)

IMAXレーザーの大迫力画面にて再度極上の体験をしてきました。
1回目鑑賞後何度も繰り返し聴いているサントラについて、改めて映画館の大音響で聴くと気持ちが高まります。ただ個人的には心臓に響くような感覚がたまらなかったドルビーシネマの方が音響に関しては好みでした。

肝心の作品の中身については、相変わらずちんぷんかんぷん。様々な考察記事や解説動画、パンフレットを読んで臨んだので、大筋は掴んでいましたが、やはり完全に理解するのは難しい…。自分の頭の悪さに残念な想いでいっぱいです。
細かいことを気にせず映画自体を楽しんだ1回目鑑賞は大満足だったんですが、出来るだけ理解しようとリアルタイムで考えながら観ると頭がショート。
IMAXの大型スクリーンでデビッキ様の全身ビキニ姿を拝めたことが収穫でした。
1回目より2回目の方がより謎が深まり、考えようとするともはや“楽しむ”ということを忘れてしまいます。

比較するとすれば私の大好きな『インターステラー』は細かいところを理解せずとも弟のジョナサン・ノーランが脚本に絡んでいるからか人間ドラマが充実しており、十分に楽しむことができるんですよね。
残念ながら考えれば考えるほど迷路にハマる本作は私には向かないかもしれません。初見の時の感動は間違いない初めての映画体験だったので、4.4のスコアをつけましたが、自分の理解度が追いつかないため今回は少しスコアを下げて4.2としました。
ただやはりカーチェイスや謎の覆面との格闘、クライマックスのスタルスク12での挟撃作戦はかなり見応えがあります。


◆3回目鑑賞@梅田ブルク7(2020/9/29)

1回目鑑賞の音響があまりにも良かったのでドルビーシネマで再鑑賞。
前日に映画好き仲間でツイキャスを実施して、改めて本作の謎の解明と確認事項のために観に行ってきました。

ただですね、やはり本作の凄さって鑑賞後に答えが出ずとも仲間たちと語り合ってあーだこーだ議論できる点にあると思うんです。
難解だとは言われていますが、ストーリーは単純明快で、細部まで理解しようとすると難しいというところでしょうね。

以下ネタバレ要素を含みながら記載します。




今回のツイキャスで争点になったのは以下の点。

①キエフ国立オペラ劇場の銃痕はいつついたか

②ニールの正体について、その確証

③オスロ空港の逆行戦闘に向かう最中の主人公の傷口はいつできたのか

④1回目のオスロ空港突入時に45秒間息を止める

⑤キャット役エリザベス・デビッキのパンツ

①については、
これは正直全然わかりません。序盤逆行銃で命を救われた主人公でしたが、その逆行銃の銃痕がいつ何時にできたものかということ。
会場内で銃撃が繰り広げられていたのでその痕かとも思ったのですが、必ずしも同じ銃痕になるとは限らないはずですし、やはり確証はわからずじまいでした。

②については、
これも結局のところわかりません。おそらくニールの正体は“彼”なんだと思いますが、やはり妄想の域を出ません。“彼”がニールと共通する例のアイテムを身に付けている描写なんかあれば確実なんですが、それも見つけられず。あとはニールのセリフから読み解けるものがあったかどうか。

③については、
これは1回目のオスロ空港の戦闘で主人公が謎の男の肩をナイフで突き刺しました。
2回目逆行主人公がオスロ空港に突入する際、突然流血したわけですが、これがいつ傷口が開いたかという謎。
結論から言うと空港の戦闘でついた傷だと思います。いや、そりゃそうやろ何言うとんねんって話だと思うんですけど、我々は逆行視点で観るから混乱するわけで、2回目突入前は彼らは睡眠を取って休んでいます。その間に傷口がかさぶたになるなどして塞がったと考えられるでしょう。

④については、
これはもうおふざけになるんですが、キャスメンバーと視聴者の間で、オスロ突入時に主人公たちと同様自分たちも息を止めた勢が出てきたんですね。
そんなこと考えもしなかった私としては「ポカーン」とした状態でしたが、今回の3回目鑑賞は訓練時も含めてちゃんと息を止めましたw

⑤については、
これもバカな話です。カーチェイスシーンでデビッキのパンツが見えただのどうのこうのの話題になり、まぁ実際2回目IMAXレーザーの方が見やすかった(?)んですが、今回もちゃんと見えました。とはいえやはり終盤の水着姿の方がドキドキします。


バカ話も含めて、やはり『TENET テネット』は面白いなと。ここまで鑑賞後に人と語りたくなる映画もここ最近少なかったような気がします。新型コロナのせいでソーシャルディスタンスとか言われている昨今ですが、やはり人間関係の希薄化は避けたいところ。こうやってみんなで楽しめる話題作りをしてくれたノーラン監督には感謝の想いでいっぱいです。

※2020年劇場鑑賞116本目
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