アトム・エゴヤン監督の初期作。
再鑑賞。
イギリスへ行ってしまった恋人に妊娠を伝えるためアイルランドからイギリスのバーミンガムに来たヒロイン・フェリシア。
しかし恋人の行方は僅かな情報のみで探すあてもなく途方に暮れる。
そんな彼女を見掛けて声をかけてきたひとりの中年男性ルビッチ。彼は親切に彼女にいろいろとアドバイスをするが実は目的があった……という話なんですが、自分の中では、犯罪者なんだけど愛情飢餓のおっさんに少なからず同情してしまう、おっさんの魂の救済映画枠に入っています。
物語の大筋は概ね上記なのですが、全体があわいんですね。
ルビッチの重ねた犯罪行為は回想シーンのみで彼女達との会話のみ。
ルビッチの既に亡くなっている母親は有名な料理家で彼女の料理番組を繰り返しみながら夕食を作る(腕はプロ並み)会社では部下に慕われているものの、誰かから愛されたいという欲求は解消されず、ルビッチは理想とする『天使』を探して車を走らせる。
そしてフェリシアに出会う。
フェリシアは素朴な性質で、ルビッチの親切に疑うことをせず感謝を述べる。
そしてラストも彼女自身が危険な目にあっていながらルビッチに「それでもあなたの親切は信じるわ、あなたはいい人(台詞ウロ覚え)」と伝え……それによって彼は打ちのめされるのと同時に解放されるわけです、これまでの懊悩から。
その結末が、うん……そうだね……しかし……やるせねぇなあ……というおじさん哀歌になっちゃう(チョロい自分)
この監督の作風なのだと思いますが、余白を残すのと、物語のレイヤーがそれぞれあわい重なり合いをしていて、ドラマティックな展開はなく淡々とした流れで、そして少し突き放している。人はその人の人生を歩むしかないし、いつでも正解が用意されている訳ではないという当たり前のことを、言葉にしずらいてすが、そういう形で作品を作っている気がします。
個人的には好きな監督なのですが、間や映像で行間を匂わせるつくりなので、はっきりした物語が好きな方には向かないかも知れません。