ぬ

ひとよのぬのネタバレレビュー・内容・結末

ひとよ(2019年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

人のつながりの複雑さを、きちんと複雑に描けていた。
序盤は、次男と母親らの対立構造で進んでいたが、こうも綺麗に立ち位置を分けられていたのは、母親がブレなかったことにあると思う。
途中の「私は間違ってない。」というセリフにもあった通り、彼女は一貫して、子供達の為、彼らの自由の為に正しい行いをしたと思っている。
一方、次男は、暴力に耐えれば、やがて自由になれたのだ、あなたは殺人者の息子というレッテルを自分達に貼った迷惑者だ、と主張している。それは、半分本当で、半分嘘だった。感謝もあったし、文句もあった。それなのに、素直に感謝しきれず、被ったデメリットのみを列挙し、母親を否定していただけなのだ。
その次男の揺らぎが、物語に様々な歪みを生み、この複雑に絡み合う人間関係を作り出していた。
終盤、主人公にとって大切な人がさらわれ、追いかけるという、ベタもベタな展開になったが、もはや、あれはあれで良かったのかもしれないと思っている。
何故なら、混沌とした感情の渦に飲まれながらも、最後は母親への感謝という、単純で明快な感情に帰結した次男を想起させるからだ。最後は素直に安直に愚直に、終わってもいいだろう。
ぬ