badhabit

ひとよのbadhabitのネタバレレビュー・内容・結末

ひとよ(2019年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

好きになる映画は冒頭の数分で「あ、この映画絶対好き」と決まってしまうんだけど、ひとよも例に漏れず、タイトルが出た瞬間には既に大好きな映画になっていた。
子供達が迷わないように、後悔も畏怖も絶望も飲み込んだ震える声で「誇らしい」と告げる母の姿に、一気にこの映画の世界に惹き込まれた。
ともすれば「邦画らしさ」と揶揄されかねない安っぽい展開や笑えるような泥酔の演技すら、作品の魅力の一部として感じられる。いやそれにしても佐々木蔵之介の酔っ払いの演技は笑ってしまったな…。
とにかく田中裕子演じる母の存在感が凄くて、多少演劇じみた過剰さはあれどそれが小春という人の不器用さに上手くマッチしていて、道下にかける言葉に説得力があった。すごく好きな台詞だ。
三兄妹のキャスティングが最高で永遠にあの三人を見ていたくなる…佐藤健あんまり好きじゃなかったんだけど、この役はすごく合ってるな。なんて綺麗なドロップキックなんだ…。やっぱり優しい好青年よりこういう役の方が似合ってるよ…。
鈴木亮平もう安定して素晴らしい演技をしてくれていた。
長男だから、どんな母でも受け入れなきゃいけないと思い込んでしまっていたんだな。母が自分の人生の時間を犠牲にして作ってくれた自由だから、どんな手を使ってでも夢を叶えなきゃいけなかった次男と、ただ母を信じて待っていた妹と。三者三様のそれぞれの想いが、表現力の高い三人の俳優によって台詞の説明に頼りきらずに伝わってきて胸を打たれた。
筒井真理子さんもう本当に大好きな女優さんになった。彼女が出ているヒューマンドラマは当たりだ。
家族だろうがどんなに身近な存在だろうが、こいつさえいなければ、いなくなればいいのにと思うことはきっと当たり前にあることで、小春のしたことは勇気や度胸等ではないし、正しい行動とは決して言えないが、責めることは出来ない。
白石和彌監督の描く喪失から前に踏み出す華族の姿、すごく好きだな。
badhabit

badhabit