YYamamoto

デッド・ドント・ダイのYYamamotoのレビュー・感想・評価

デッド・ドント・ダイ(2019年製作の映画)
4.2
ゾンビ映画の脱構築映画としては「バタリアン」や「ショーンオブザデッド」などがあるが、そうした映画の中で最も挑戦的なのがこの「デッドドントダイ」だと思う。ゾンビ映画であることに過剰なまでに意識的で、そのテーマを全部セリフで言ってしまう、など型破りな挑戦が様々なされている。その結果、非常に現代的で新鮮な面白さにあふれた新たなゾンビ映画が誕生している。

グランドホテル方式で様々な登場人物の話を語るのかな、と思いきや彼らはとてもあっさり死んでしまう。そこには壮絶なドラマもなければ、ストーリー的な起伏もない。ただゾンビに食べられるだけだ。それがこの映画の肝である。ゾンビのいる世界とゾンビのいない世界がシームレスに描かれていて、それら二つの世界に違いはないし、人間だってゾンビと同じようなものじゃないか、ということを分かりやすく示してくれる。そこにメタ的な視点も盛りこんで、「ゾンビ」というものが様々な映画やドラマ・ゲームなどのフィクションで消費されるだけの存在になってしまったことを茶化している。これは、ゾンビが「ウォーキングデッド」のヒットなどでポップアイコン化し、消費社会を批判するはずのゾンビ自体が、それをわからない人々によって消費されてしまっている現状に対する、ジャームッシュのゾンビ愛にあふれたメッセージであると思う。

もちろん、ジャームッシュの映画らしさ、映画に関する小ネタ、玄人好みのキャスティングなど色々な最高な要素が揃っているので、ゾンビ映画として見なくてもとても面白い。
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