黒田隆憲

デッド・ドント・ダイの黒田隆憲のネタバレレビュー・内容・結末

デッド・ドント・ダイ(2019年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

「この世界は完璧だ。細部まで味わえ」
というセリフが出てくるように「完璧なジム・ジャームッシュ世界」を細部まで味わい尽くしたくなる内容だった。

主題歌『デッド・ドント・ダイ』のかぶせ、ダイナーでゾンビに食われた死体を発見したときの、3人の保安官(ビル・マーレー、アダム・ドライヴァー、クロエ・セヴィーニ)のリアクションのかぶせ(これは、のちに登場する女性リポーターもかぶせてくる)、忘れた頃に登場するイギー・ポップ・ゾンビのかぶせ……。ジャームッシュ、日本のお笑いでも参考にしたの?っていうくらいの「かぶせ」の応酬に終始笑いっぱなしでした。ちなみに、一番笑ったのはアダム・ドライヴァーが車で参上するシーン。

ジョージ・ロメオ・スタイルのノロマなゾンビだったのも、ジャームッシュのオフビートなリズムに合ってて良かったし(テトリスみたいに徐々に詰められ殺されていくのにうってつけ)、ティルダ・スウィントンの怪演っぷりも圧巻。彼女の役名がゼルダ・ウィンストンだったり、最後はとんでもない正体が明らかになったり、アダム・ドライヴァーが割と初っ端から「これはメタフィクションです」とバラしちゃったり、トム・ウェイツがラストでいきなりワケわからん現代社会批判を語り出したり、全体的にふざけてる。

前作『パターソン』で、初期ジャームッシュのグルーヴが戻ってきたのは嬉しかったものの、なんだか「ハートウォーミングな映画を作る人」みたいな扱いになっちゃったら嫌だな〜と思っていたので、この豪華キャストを無駄遣いしまくった『マーズアタック』みたいな徹底的なB級ホラーっぷりは大、大、大歓迎です。ただ、難を言えば後半ちょっとダレたなあ。

ステラ役のマヤ・デルモント、まだ無名だと思うのだけど(17歳)、ちょっと超然とした表情や声色がめちゃくちゃ最高で、これから大ブレイク間違いなしの期待の俳優だと思います。

ティム・バートンだったら『ビッグ・フィッシュ』じゃなくて『マーズ・アタック』、北野武だったら『HANA-BI』ではなく『みんな〜やってるか!』みたいな作品。『パターソン』を期待しないでください(笑)。
黒田隆憲

黒田隆憲