パイルD3

9人の翻訳家 囚われたベストセラーのパイルD3のレビュー・感想・評価

3.5
小説家が主人公の映画は数多くありますが、どこの国の作品でも、ほとんど駄作は無い気がします。

作家と本の絡んだ話で、意外性がおもしろかったのが、ミステリーを翻訳するために集められた人々の身に起こるシチュエーション•ミステリー「9人の翻訳家」。
謎解きはもちろん、これも脚本の妙技に呑み込まれる一本です。

「デダリュス」という3部作の大ヒットミステリー小説の完結編を世界同時出版するために、出版社の社長からフランスの某所に集結させられた9人の翻訳者たち。
全員が膨大な書物資料を擁するシェルターのような場所に放り込まれて、外部との一切の接触を絶たれた厳重な監視体制の下で翻訳の日々がスタートするが、ある日、小説の流出と引き換えに大金を要求する脅迫メールが社長に送られてくる…

ここから謎に包まれた犯人探しと先の読めないクライムミステリーが展開していく。

“…子供の頃は手品師に、いつもタネ明かしををせがんで、必ずその目的を果たした…“
冒頭のタイトルに被せて、こんな言葉が流れる。
その後、いきなり炎がボウボウと燃え始めて…
観る前の客の心理と、小説を開いた瞬間の気持ちを表すような導入部で、既にグイッとドラマに引き摺り込まれる。

翻訳へ向かう9人が、ズラッと正面に向かって並び、その後横向きに一列になって歩き始めるとタイトルが出るというオシャレな見せ方からしてチョッと気分が昂まる。

当然ながら、座って翻訳に勤しむ人々のドラマではなく、9人のクセのある男女による一筋縄ではいかない抑揚のある筋立てと、読みきれない結末が待ち受けている。

ミステリーファンでなくとも、このドラマチックな新食感のフレンチミステリーは、美味しく味わえると思います。
パイルD3

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