どらどら

さくらのどらどらのレビュー・感想・評価

さくら(2020年製作の映画)
4.7
- あぁ、神様はまた、僕らに悪送球を仕掛けてきた 

人は生きているだけで傷つき続ける
そしてそれ以上に、他人を無意識に傷つけ続ける
性欲、嫉妬、軽蔑
悪送球を投げ続ける
人は、なんて醜いんだろう
永遠なんて、ないのに

“さくら”はその全てを無条件に肯定する
わたしにむかって、ボールを投げているということ
それがたとえ、捕れるはずのないものだったとしても
あなたがいま、わたしと一緒に生きているということ

神はいないのかもしれない
もしいるならそれは、その無条件の愛だ
さあ、生きよう

- あなたの愛は、僕を世界の高みに連れていってくれる
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矢崎仁司×西加奈子
人は生きているだけで傷つき、傷つけ続けているという真理から西加奈子は一回も逃げたことがない
それに目を瞑って描かれた物語は全て嘘であると言い放つかのように
そして同時に、その上で生の全てを無条件に肯定する愛
西加奈子作品の本質が、この映画には焼き付いている
だからこそこの作品のタイトルは”さくら”なのであり、ただひたすらに変わらずに尻尾を振り続けるさくらこそが、「神」なのである(もちろん宗教的な意味など全くなく)

小松菜奈の身体性が引き受ける痛みと、そのナイフのような危うい発露
この映画のあらゆる起点として圧倒的な説得力と魅力を放ち続け、一見緩やかすぎる画面に常に不穏さを持ち込み、緊張を観客に保たせ続ける
だからこそ、彼女の想いが溢れた時、この映画の意味と生の真実に観客は触れる

北村匠海の声が良すぎて、冷静に考えるとナレーション過多にも思えるが、全く気にならないどころか心地よい

寺島しのぶ、永瀬正敏といった熟練のバイプレイヤーの魅力、ヒーローたる説得力を全身で纏う吉沢亮と、周りも完璧
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