「自分は光をにぎつてゐる
いまもいまとてにぎつてゐる
而もをりをりは考へる
此の掌をあけてみたら
からつぽではあるまいか
からつぽであつたらどうしよう
けれど自分はにぎつてゐる
いよいよしつかり握るのだ
あんな烈しい暴風の中で
摑んだひかりだ
はなすものか
どんなことがあつても
おゝ石になれ、拳
此の生きのくるしみ
くるしければくるしいほど
自分は光をにぎりしめる」
形あるものは滅びるから
再開発も都会の喧騒も
取り壊しも別れも
たとえ死であっても
あの出会いは、あの言葉は、
あの暮らしは、
消せはしない
ずっとそこにある
ここから、はじめる
-どう終わるかって多分、大事だから
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圧巻だ
映画館で見なかったことを悔やむ
この映画を見るために生まれてきたのではないかと錯覚するほどだ
圧倒的な映像の美しさ
セリフはほとんど語らない
事件もほとんど起きない
しかしこの映画は、どんな映画よりも雄弁に、言葉の力を語っている
松本穂香の存在感から目を離せない
彼女の肉体が、この映画の沈黙の全てを引き受け、まとめ上げている
そしてその肉体から発される言葉は、重くて温かい
そっと背中を押してくれる、そんな響きだ