水

わたしは光をにぎっているの水のレビュー・感想・評価

わたしは光をにぎっている(2019年製作の映画)
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現代都市は叶わなかった夢や報われない思いのるつぼであって、作中にやわらかく漂う全体的な(都会の温泉のようにぬるま湯みたいな)諦めの温度が心地よかった。
無理してやりすごしていること、たくさんあるのに知らないふりして続いていく日々を恨めしく思いながら、でもいつか絶対にという前のめりな野望がくすぶる渡辺大知の薄めな存在感もよかった。東京にきた松本穂香がびくびくしながらもたいして東京に感動してなさそうなのもよかった。

作中でたびたび口にされる「帰ります」という言葉、家や故郷に帰ることそのものよりも、その場からの脱出の意味が強かった。本当の意味での帰る場所がない人たち。帰りたいのに帰れない。

どっちつかずのことをとても大切にしている映画。肝心なところで白黒はっきりさせない、濁った感じも銭湯のお湯みたいだった。

トークショーでの質問への中川監督の姿勢やお返事が相当よくて、なぜだかそこでひとりで泣いてしまった。
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