だいごろー

わたしは光をにぎっているのだいごろーのレビュー・感想・評価

わたしは光をにぎっている(2019年製作の映画)
4.0
@新宿武蔵野館

とても良かった。何気ない日常を一歩一歩、ゆっくり、だけど確実に。自分のできることから丁寧にすることのかけがえのなさ、そんな日常にこそ光は差し込むのだと映画は静かに描く。

この映画は言葉の持つ力、言葉こそが心なのだとおばあちゃんの言葉を通して語りかけて来る。おばあちゃんから手渡された山村暮鳥の本。そこには映画のタイトルに引用された「自分は光をにぎつてゐる」という詩が載っている。
中盤、銭湯の湯船の中で「光をにぎる」シーンがある。とても美しく、映画でしか表現し得ない素晴らしいシーンだ。

再開発が進む街(ロケ地は立石)で、取り壊されることが決まった銭湯。経営している光石研とヒロインが男湯と女湯で隔てられながら話すシーンがある。そこで、おばあちゃんの言葉を使いながらも自分の言葉で、銭湯をどう終わらせるかを語るシーンにグッときた。確実に言葉を通じて、おばあちゃんの意思を継承し、確かな成長を表すシーン。

松本穂香が言葉数の少ないヒロインを好演。失われゆく街の風景もとても良かった。