フラワーメイノラカ

クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代のフラワーメイノラカのレビュー・感想・評価

3.3
なぜか吹替しかない。
カメラワークや演出に物語性を取り入れており、仰々しいクラシック音楽もあって、ドキュメンタリーでありながらアニメ的なケレン味が楽しめる。

芸術学としては一般常識にとどまっている印象。心理学に傾倒した解説が多く、時代考証の側面が強い。
児童分析家ヘルミーネ・フーク=ヘルムートが殺された顛末の刺激やばすぎ。

宗教画を盾に裸婦を描いていたラファエロ前派を過激化させたウィーン分離派。
クリムトとシーレはたしかに師弟関係にあった。
しかし、そのエロティシズムには大きな差異がある。

どんな芸術家も根底にあるのは自己愛だ。
クリムトは自己の中の生を愛していた。その反映として、多くの女性を愛した。
シーレは自己の中の死に固執した。その愛には、憎悪の念が多く含まれている。

彼の画をみると、ほとんど女性嫌悪の域に達していることが手にとるようにわかるだろう。
そのエゴイズムは女性自身の悪意を掬い取り、皮肉にも彼女たちを魅了する。
若き画家は、イノセンスをホールデン少年のごとく妹に繋がれたまま、ベッドでミューズと憎しみ合う。

本作はウィーン分離派の絵画に限定されていたが、世紀末絵画の代表的な画家としてエドヴァルド・ムンクがいる。
限りなく死に近くありながら、生への渇望をキャンバスにぶつけた「生命のフリーズ」。
観ていてずっと、クリムトとシーレを繋ぐ彼の「叫び」がずっと頭の裏側に張りついていた。