いろどり

クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代のいろどりのレビュー・感想・評価

3.5
クリムトの伝記映画だと思って見始めたらみんなカメラ目線で話してくるので作中のカメラ撮りなのかと戸惑っていたら、ドキュメンタリーだと気づいた。これはクリムトのドキュメンタリーというより、19世紀末から20世紀初頭の新しい芸術の開花と衰退を当時の芸術家や文化人を通して描いていて、クリムトの話題はほぼ序盤のみ。話題となる人物がころころ変わるので、今誰の話だっけ?とすぐ置いてきぼりになってしまう。とはいえクリムトの絵画だけではなくウィーン分離派の芸術、時代背景を知ることができて面白かった。

フロイトによる分析やシュトラウスやマーラーとの交流、パトロン事情などクリムトの絵の華やかさや奥深さの背景にも触れることができたのは興味深い。やはりイケメンたるがゆえの役得は普遍なのだなと感じた。ベートーベン・フリーズの説明は面白く、次のクリムト展にはぜひ行きたくなった。

ほとんどよく知らないエゴン・シーレは闇が深すぎてかなり引いた。彼が描いた自分のヌードの絵を絶賛している女性がいたけどあまり共感できなかったし、サイコな背面を知ってしまったらもうあまり見たいとは思えない。感受性を高めるためでも越えてはならない一線はある。女性を傷つける人間による女性解放の絵とは皮肉としか言いようがない。

ウィーンで活躍したヨハン・シュトラウス、マーラー、モーツァルトの音楽が次々かかる中、当時の華やかなウィーンを垣間見られて楽しくなる。ただ、1回見ただけでは学びは深められないくらい情報量が多い。Amazonの無料配信のうちにもう一度見ておきたい気もする。亡くなったときのシーレと同じ28歳だと豪語する謎のナレーターの自己主張が強めなのがこの作品のツボ。ラストのアコーディオンの曲がとてもおしゃれでYouTubeで探してお気に入りにした。
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