影山影司

パラサイト 半地下の家族の影山影司のネタバレレビュー・内容・結末

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

完璧と言っていいだろう。
ポン・ジュノ監督の狂気にリスペーック!賞。


ヌルっと始まる卑しさを感じさせる半地下家族、家族全員が互いのことを愛していない虚しさを感じさせる金持ち家族、そこに取り入るヌルっとした導入からクビになった家政婦が狂気を纏って帰ってくるシーンから一気にブラックになっていくのが凄まじい。リスペクトおじさんはもちろん高得点だが、モニターに映る笑顔だけで狂気を表現したあのおばさんもスゲーよ。

「絶対に失敗しない計画はなんだと思う?無計画だよ、無計画」というセリフが、主人公が立てた綿密な計画が破綻することの暗示、ラスト主人公のテキトーな夢物語計画につながる、物語全体を結びつける強力なワードになってるの凄まじい。

パパの感情がコンボ仕立てになっているのがいい。
パパの体臭が切り干し大根っぽい→下水にまみれて奥様からも敬遠される→地下暮らし者の臭いをバカにしやがってクソがー!という怒りの感情、娘が刺された→息子も血だらけ→嫁も切りつけられている→社長の指示に従わなきゃ→アワワワ→差別しやがってクソが―!!という感情が一杯一杯になっているところと怒りが重なった結果、感情のスパークが殺意になるのがあまりにも美しすぎる。

主人公が石抱えて地下に下っていくシーンからのバイオレンスが好きすぎて、パパ逃走までのところを繰り返し何度も見た。地下で応急的に作った物(ボーイスカウト知識で作れる罠)だから簡単に主人公が首輪を外してしまうあたりも良い、首を掴まれて追いつかれる絶望感も良い。包丁持って外に出たリスペクトおじさんが眩しそうに目を細めても誰からも注目されないのも良い。刺された妹の言葉が「クソ」なのが好き。傷口を押さえてるのに「痛いから離して」というのも良い。パパが刺殺した時に妹がマジかよコイツ、って顔するのもスゲー良い。全てが美しい。

貧乏で怠惰な生活をするのも、立身出世のために犯罪行為に出るのも、バレないからって金持ちの家のシェルターに隠れ住むのも、その中で家主に対してリスペクト感情を抱くのも、隠遁生活の寂しさから息子にモールスを送り続けるのも、狂気が美しい。スコスコ……。


唯一気になったのはリスペクトおじさんのモールス信号があまり話に絡まなかったこと。あれだけ物語で有効に働いていなかった。でも満点を与えたい作品。
影山影司

影山影司