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パラサイト 半地下の家族のクリスのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
5.0
膨大な視覚的情報量が襲う132分。
上映中は緻密に描かれている脚本、常に流れる言葉にできないような不穏な空気、加えて流れるようなシーンの切り替え(編集)のスムーズさなど様々な要素によって、ワンショットでも目を離してはいけないような感覚に襲われた。映画でこんな体験をしたのはあまりない気がする。
本作ではメタファー(象徴)となるものが序盤からかなり多く出てくるためその場で全て回収することは難しく、観終わった後に考えを巡らせてみることで良さが徐々にわかってくるという楽しみ方になると思う。

とんでもない「どんでん返し」が起こるというわけではなく、それぞれ善も悪もない人々がそれぞれ普通の生活をしているところに何かの感情が寄生し蝕んでいく様を映した傑作。


ーーーーーー以下ネタバレーーーーーー
・個人的に、この映画の最大の怖さは2つあって1つは誰にでもあるような「無意識的な差別」という点にあると思う。
わかりやすく描かれた例としては、後半で裕福なパク家が「臭い」で鼻をつまむという仕草や貧乏なキム家の半地下をほとんど壊した大雨をパク氏の奥さんが電話で「雨が降ってよかった」と言っている場面などがある。
少なくともこれら2点に関してはソン・ガンホ演じるキム家の父親が怒りを蓄積させ後にパーティーの場面で爆発させるトリガーとなっている。
・もう1つは現状を変えようとしたところでその行動は見向きもされないという点で、これはパーティーの場面でキム家の娘が重傷を負ったときに富裕層の人達は逃げることに必死で娘を放っておこうとしたこと、それからラストで息子が金持ちになり、家を新しく買う描写の後に手紙を読み進めるセリフを独白として聞かせるだけでいいのに、わざわざ息子の現在を映すことでその描写があくまでも妄想の範囲を超えないことを示唆するということに現れていたように感じた。
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