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パラサイト 半地下の家族の魂コシのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.8
2020年たまこしベスト2位

解説
アメリカの映画賞であるアカデミー賞の歴史上、初めて(アメリカから見て)外国語の作品が作品賞を受賞した事でも有名になった本作。「貧乏家族が金持ち家族の家に寄生(パラサイト)する」という基本設定だけでも十分面白いのに、二転三転するストーリーに加え、ハッとさせられる社会風刺に度肝抜かれた。

ジャンルのジェットコースター
本作はジャンルのジェットコースターだと感じた。まず序盤はコメディ。主人公一家の日常生活や会話、寄生を始めた時のこだわりが強い奥さんがあっさり騙される様は、シュールに笑える。それが一人また一人と金持ちに取り入っていくうちに、いろいろな手段を使いそれが上手くいくかドキドキする感じがケイパー(泥棒)モノのようにも見える。そして話がある程度落ち着いてきたところで、唐突な展開が起こってから急激にサスペンススリラーになる。ここまで来てしまうともう最後まで眼を離す事が不可能。雪崩のように急展開をくり返し、異なる立場二組の家族を交互に映し出すことで、格差社会を痛烈に批判する風刺映画となる。そして終盤、感情の高まった各キャラクターが起こす行動によって景色がホラーへと一変。そこからどうオチをつけるのかと思いきや、静かなドラマとして家族愛に終わる。こんなにもコロコロとジャンルが変わる作品も珍しいと思うとともに、その変貌と構成が上手いと思った。

目に見えない格差を自然に描く演出
本作が一番評価されている点は、格差社会を上手く見せている事ではないかと思う。半地下に住む主人公たちが寄生する富裕層の家が丘の上にあり、富裕層住宅街から半地下の家に帰るまでの道がとても長い階段となっており、目に言えない貧富の差を視覚的に表現されている。また、どんなに表面だけ取り繕っても埋まらない富裕層との壁を目に見えない「におい」として表現している。格差を言葉ではなく、「階段」で「におい」で見せるのは凄い事だと思う。

風刺
更に単純に格差を描くだけでなく、立場が変われば誰でも冷酷になり得るかもしれないことも描かれている気がする。最初は「持たざる者」だった主人公一家も、寄生を完了させると、以前の自分たちと同じ立場だった人を見下し簡単に突き落とす。そんな登場人物の中で唯一、自分が蹴落とした人間のその後を心配する父親主人公が印象的だった。
普段、社会問題に声を上げながら、自分ももしかしたら何かに加担しているのかもしれないと、改めて考えさせられた。

今まで韓国映画はほとんど手を出してこなかった(べつに反韓とかじゃなく、単純に興味がなかった)。しかし、2017マイベスト『新感染ファイナル・エクスプレス』を観てから、韓国作品にも少し興味が出てきていたので、今後もっと手を出していこうと思った作品だった。
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