ARAN

パラサイト 半地下の家族のARANのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.5
一昨年の是枝監督の万引き家族のパルムドール受賞に続いて昨年もポンジュノ監督が韓国映画としては初の受賞。2年連続でアジア映画が受賞するというのは喜ばしい。アカデミー作品賞も獲得!素晴らしすぎる。万引き家族が家族の定義に踏み込む社会派映画だとしたらパラサイトは貧困層と富裕層の格差社会に踏み込む社会派映画。近年の映画に与えられる主要な賞というのはやっぱり深いテーマを持った社会派映画が有利。映画の社会的な役割が単なるエンターテイメントだけじゃなく公衆に強烈なメッセージを伝えるための媒体にもなっていってる。ただ万引き家族もそうだし特にこの映画なんかはそうだけどしっかりとエンターテイメントとしても楽しめる。ケイパーもののように一人一人の個性を使って1つの事を成し遂げていく達成感や緊張感が味わえて時折クスっと笑える。子供までは多分無理だけれど映画を単なるエンタメとして見る人にもこの映画の70%以上は楽しめる。大衆向けにしつつも伝えたい事をしっかりと描いていて現代における映画の二面性(エンタメとメディア)の役割をしっかりと果たしている。
〜ここからネタバレ〜
前置きはここら辺にしてこの映画の素晴らしいところは皮肉を込めた伏線や対比の構図である。冒頭でwifiが繋がらなくなったと携帯を上にして電波を探し求めているキム家に対して、真実がバレそうになって机の下で隠れているキム家の3人と共に一晩過ごしているのに全く気づかないパク夫妻。貧困層は上を求めて手を伸ばしているが富裕層は下など一切見ない。格差社会の現状を示している。また、ダソンが描いた壁に飾ってある絵をギウはチンパンジーと言ったが、最後にはチンパンジーが石で獲物を殺すかのようにムングァンの夫に頭を殴られてしまう。しかもその石も自分よりは上の存在であるミニョクから貰ったもの。他にもギジョンが初めてパク家に訪れた時にダソンが描いた絵には、映画のラストにムングァンの夫が包丁を持って庭に出てきたシーンのような光景が描かれている。またキム家が避難してる時に計画について非難していたが(これは絶対に監督の意図じゃない、自分のただのダジャレ)、最後にギウはあの家を買って父さんと再会するという計画を手紙に書いてあるのもいい皮肉が効いてる。監督によると今のギウの給料だとあの家を買うのには500年かかるらしい。長くなったけど風刺が効いたいい社会派映画でした。
ARAN

ARAN