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パラサイト 半地下の家族のレクのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.3
ポン・ジュノ監督の才能をひしひしと見せつけられたのはなんと言っても『殺人の追憶』ではないだろうか。
ポン・ジュノらしいユーモアさが凝縮されたデビュー作『ほえる犬は噛まない』や観客の想像力を刺激する『母なる証明』も好きな映画です。

さて、ポン・ジュノ監督作に共通するものは何か?と考えた時に見えてくるのは
社会問題を提起し、それでいてあくまでも娯楽の中で捉える圧倒的センス。

これだと思います。
映画という娯楽性を損なわず、ユーモアさを交えながら社会風刺を練り込み、そして日常が非日常へと切り替わるポイントを持ち前の演出力で描き切る。


『パラサイト 半地下の家族』は富裕層と貧困層の格差がテーマとしてあります。
それを匂わす演出の数々。
例えばピザ屋と内職、酔っ払いと家族、高台にある一等地と半地下、二階建ての高級住宅地。
上下の対比や格差をさり気なく、それでいてしっかりと画として見せているんです。

ポン・ジュノ監督の過去作『スノーピアサー』でもひとつの列車に富裕層と貧困層が同乗し、富裕層のいる先頭車両を目指すといった底辺から頂点へと抗う姿が描かれましたね。
昨今、このような貧富の格差をテーマとした映画、例えば是枝裕和監督作『万引き家族』や片山慎三監督作『岬の兄妹』など日本でも数多く作られており、映画だけでなく現実を生きる我々国民も目を背けるわけにはいかない問題へと発展しています。

社会的な階級の中で、半地下の住人がその貧困層から抜け出すべくある計画に移す物語。
今作『パラサイト 半地下の家族』のテーマでもある貧困層が富裕層へ抱く羨望や憤怒はジョーダン・ピール監督作『アス』にも通じる部分がある。
『パラサイト 半地下の家族』と『アス』の比較は『アス』のネタバレになるので割愛しますが、良い意味でポン・ジュノ監督とジョーダン・ピール監督の作家性の比較にもなる映画だと思います。


サブタイトル『半地下の家族』。
特に、鑑賞後には貧困層の住人と金持ちとの暮らしの対比が明らかとなり、半地下という地下であり地上でもある曖昧な立場がより一層引き立てられる仕様になっていますね。
それ故に上へと登ろうとし、下へと落ちていく。
地下ではなく、半地下という貧困層がよりリアリティを感じさせ、物語に説得力を持たせているのもポン・ジュノ監督の巧さではないでしょうか。

また、クライマックスの衝撃が人間の本質は変わらないことの皮肉を痛烈に描いています。
貧富の差、それだけに留まらない韓国の闇を描き出したポン・ジュノ監督に尊敬の念を贈るとともに、ソン・ガンホの存在感と演技力を見せつけられたなというのが率直な感想です。
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