SatoshiFujiwara

パラサイト 半地下の家族のSatoshiFujiwaraのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
3.8
半地下、ってのが効いている。言うまでもなく上層階ではなく、路面に面しているのでもなく、かと言って明確な地下でもない。その半地下に押し込められた家族4人は、他の大勢とは違った位置から道端で繰り返し立ちションをするオヤジやら喧嘩する人たちを見る羽目になる。この空間設計からしてキム一家4人の世間に対する姿勢と言うか置かれた状況のメタファーになっているが、これと対になるのは裕福なパク一家の一面ガラス張りのリビングから丁寧に整えられた庭を捉えたショットであろう。

または、高台に住むパク一家と低地に住むキム一家の対比。パク一家の家族は誰1人として下には向かわない代わりに、キム一家の4人は入れ代わり立ち代わり上へ上へと向かう。しかしそれがかりそめの上行であるのはまるでノアの大洪水のような豪雨の中でどんどん下へ降りて行かざるを得ないキム・ギテク(ソン・ガンホ)とキム・ギウ(チェ・ウシク)の姿に典型的に表される。言うまでもなく水も下へ下へと流れて行くしかない。

こう書くとなんだか説明的なように捉えられるかも知れないが、しかしポン・ジュノはこれらをあくまで映画的なムーヴメント=運動性の愉悦感ありきで作っているのは明白であって、テマティックに作ろうとして作っているのとは訳が違う。だから面白いんだろう。なるほど誰が見ても韓国の超格差社会を題材に用いているのは明確なれど、それが変に説教じみていない。ちなみに観ていて思ったが、同じポン・ジュノの『スノーピアサー』では裕福な支配層が列車前方におり、対して貧民は後方。そして貧民たちは理不尽な支配に反旗を翻すべく前へ前へと向かう。この横軸を縦軸にしたのが『パラサイト』ということになろうか。もっとも、『パラサイト』には『スノーピアサー』のような明確な対立構造があるわけではないが。

…なんて肯定的なことを書いたけれども、周りから伝わる前評判がムチャクチャ高かったんで期待値上げ過ぎたってのはあるだろうが、良かったのは間違いないけど「ん…?」ってところはありますね。
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