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パラサイト 半地下の家族のkioのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
3.0
最初に断っておくが、細部に散りばめられた伏線や巧妙なプロット、カメラワークなど監督の鬼才については言及するまでもない。
下記は批評というよりも完全に主観的な感想である。

・貧困の有り様を巧く写実しているのに対して(半地下での暮し、偽れない臭い、金銭的余裕と人間性の関連への言及等)、あまりにも「エンタメ」性が強すぎる。
抑々私は日本のテレビ番組でよくやるドッキリ企画の様に、人を騙して反応を楽しむという行為が嫌いだ。なので、半地下家族がテンポ良く金持ち家族に取り入って寄生していく様子を見てもただただ気持ちが悪くブラックジョークにも純粋に笑うことが出来なかった。
(結末は因果応報で上手に纏めてはいるのだが…)
更に、奥様はともかくどんな盆暗でも会社のトップにいる旦那の様な人間がここまで簡単に騙され続けることは先ずないのでは、と思ってしまった。あくまで社会風刺の中での“象徴”として描かれているだけなのだから無問題だが、私の中でこの映画のリアリティとエンタテインメントの融合がピタリとハマらず、違和感が残ってしまった。

・地下の世界と“二重”の寄生構造も確かに面白い発想だがまるで予測しなかったかと言われるとそうでもないし、全く別の世界観だが“地下”を描いた作品なら「オペラ座の怪人」や「ドントブリーズ」の方が個人的には衝撃は大きかった。また地下ではなく“秘密の部屋”だが、スペイン/コロンビア合作映画「ヒドゥン・フェイス」にも通ずるスリラー要素も感じた。

・感動が薄かったのは、先に公開された「ジョーカー」の影響もあるかもしれない。「パラサイト」同様、貧困が現存する社会構造に無関心な層に対して痛烈な風刺となる「ジョーカー」は、犯罪に至るまでの主人公の心理描写に特化されていて、ホアキンの演技も感情に突き刺さる。どうしても同じアカデミー作品賞候補として今作を比較すると、物足りなく感じてしまうのだ。

散々書いたが、無自覚な人々の指摘によりコンプレックスが刺激されて鬱憤が溜まっていく父親の演技には舌を巻いたし、ギジョンが便所で煙草を吸うシーンも最高だ。
評価される所以も解る為、純粋にこの映画を楽しめない自分の度量の狭さを恥じた。
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