チッコーネ

パラサイト 半地下の家族のチッコーネのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.5
開始30分ぐらいから『冴えている、しかも勢いと余裕がある作品』だとわかり、映画的な視座などすっかり忘れて物語にのめり込んだ。

「受験に失敗したら、その後の人生も浮上できない」など、小耳に挟んだことがある韓国社会の閉塞感が、
目立つ綻びのないエンタメ脚本へ巧みに織り込まれている。
悪人同士のやり取りの中にさえ残る礼節、そして息子が日常的に用いる父親への敬語の中に『伝統ある儒教精神』が垣間見れるのも、新鮮。

登場人物たちの灰汁は一様に強いが、誰かひとりを暴走させることでお茶を濁すのではなく、それぞれが冷静に使いこなされている。
こうした『抑制』を司る知性を総動員し、全体を濃密に纏めあげられるかどうかで、監督の力量が問われるのだ。
その意味でポン監督は、超一流である。

韓国映画の中で北朝鮮へのブラックユーモアが登場するのを観たのも初めてだったので、爆笑してしまった。