未亡人のラトナは経済発展著しいムンバイで住み込みのメイドとして働いている。雇い主の結婚が破談になると彼を気遣いながら世話をするが…
身分による差別と偏見が色濃く残るインド社会に変革を起こそうと、インド出身の女性監督が敢えてタブーな恋愛を描いたラブストーリー!
広すぎる高級マンションに1人で暮らすことになった傷心のアシュヴィンは、身の回りの世話をしてくれるラトナの健気な態度に次第に惹かれていき、やがて2人は恋に落ちる。
日本人の常識で考えれば、独身の金持ちイケメンと若く慎ましい未亡人が一つ屋根の下に住めば、まあそうなるよなと思ってしまうが、インドでは未亡人の再婚は未だに難しくカースト制の名残りで異なる階層間の結婚はほとんどないという。
原題は「Sir」で直訳すると「旦那様」であるが、この原題の意味は日本人が想像する以上に重く、二人の間には決して交わることの無い大きな隔たりがあることを示す。
現にアシュヴィンの母や姉から見て、ラトナは視界にも入らない存在であることを示す描写がある。
アシュヴィンの友人が言った「お前はいいかもしれないけれど、苦しむのは彼女だぞ!」という台詞は、冷たいようだが真実だ。
同じインド人だとしても、文化が全く異なる環境で育っており、服の着方も、食事の仕方もまるで違う。そのような関係がうまくいくことは少ない。
ムンバイ出身ながらアメリカで教育を受け、現在はヨーロッパでも活躍する女性監督が描くだけに、フランス仕込みのシックなインテリアや色鮮やかな布市場などお洒落な場面にも目を奪われる。
果たして2人は結ばれるのか、ラストで邦題の意味がわかる!
2020年2月劇場にて鑑賞した映画を再視聴。