かぴばる

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊のかぴばるのレビュー・感想・評価

4.6
 終始圧巻の"動く絵画"

 ウェス・アンダーソン監督作品は2作目。『グランド・ブダペストホテル』を観たときはとんでもない映画だと興奮したものだが、監督名は意識していなかった。本作は端から期待大で鑑賞。そしてもちろん裏切られなかった。

 画面の隅々にまで配慮とこだわりがゆきとどいた作品。映画というよりは舞台のようであり、切り取りようによっては絵画や雑誌にも見える。映画ってメディアでできることはスーパーヒーロー活劇だけじゃないんだぜ!と教えてくれるエンターテインメント超大作。

 画面はとにかく美しく、セリフ回しは軽妙洒脱でぷすぷす刺さる。真理しか話されていない。ただ、ナレーションもセリフもとにかく多く、字幕を読むのに全力を注がねばならなかったのでたいへん疲れた。映像部分がモノクロやパステルカラーが多いのは、おめめの健康への配慮だろうか。

 まさに満点をつけたい作品。少しだけ残念だったのは、冒頭の短編と1作目の名画の話が強烈すぎて、終盤にかけては尻すぼみ感があったことぐらいか。まぁどれも面白いし、個人の好みの問題なんですけどね。