「この世のどこにも、780ウォンの人生はない」
セウォル号事故は未だなお韓国の皆さんを苦しめているんでしょう。日本からは計り知れない思いがあるのだと思います。
この映画では警官を目指していたソン・ジウォンという女の子が、亡くなった方々の象徴として回想シーンで登場します。
・・登場人物一人目として・・
娘ジウォンの部屋をそのままに、なにも捨てることが出来ない父親がいます。
・・登場人物二人目として・・
ジウォンのジャージやリュックを身につけて泣き暮らしている親友がいます。
二人とも自殺未遂をしています。
・・登場人物三人目として 主人公になるわけですが・・
汚職警官チョ・ピロ(イ・ソンギュン)が関係してきます。ちなみに「パラサイト」で最後殺されてしまう社長さん役の方ですよ。
そしてこの映画は「アジョシ」を撮ったイ・ジョンボム監督の作品です。
〈そんな生き方を望んだわけでもないのに、荒波にもまれ踏みにじられる弱き者の、ささやかな思いを悼む人間の話〉
ブレてないです。(なぜブレてないかは以下)
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テソングループの7800億ウォンの裏金隠蔽という、現実の傲慢な韓国大企業の実態の象徴を軸に、腐敗した検察と腐敗した警察を絡め、そしてセウォル号事故にまつわる怠慢な行政と正義を行わないマスコミも背景にあるわけですよね。
なんとも八方塞がりなくらいの社会悪!!!
この7800億ウォンから、このテソン会長が「780ウォンの価値しかない虫けらが!」的なこと言うんです。そして”怒りの逆襲”が冒頭のセリフです。
こんな社会悪に苦しめられる人々の象徴は上記ソン・ジウォンの親友ミナ(チョン・ソニ)です。
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以下は内容に直接触れます。
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思うんですけど、この映画に好意的な反応を示していない男性って、(当然だとは思うんですが)映画の中の男性(チョ・ピロ)に共感しようと思って観ているのではないかと思うに至りました。きっと「アジョシ」におけるウォンビンを期待しながら観ちゃう。すると、こいつ最低ですからね!笑
警察なのに盗みはするわタカリだし刑事としてもダメダメ。
これ、まずはミナの気持ちに寄り添って観る映画なんだと思います。それがそもそも監督が意図したルートなんでは?
ついついね、この監督ですから。そりゃわしも最初「アジョシ」とダブらせながら観ちゃいました。
”アジョシ” は妻を殺され、社会の最低なところを生きてきた男。それが純粋な少女を守ろうとするわけですが、今作はある意味守り切れない映画。通常の社会がまず子供守れていないわけですよ。セウォル号が象徴的で、すべての子供は金持ちの子しか守られていない。
そして、その守られていないけど、懸命に弱き友達やその父や良き者を守ろうとしている者の象徴がミナなんだと思うんです。
だから、
〈そんな生き方を望んだわけでもないのに、荒波にもまれ踏みにじられる弱き者の、ささやかな思いを悼む人間の話〉
はブレてないと思うんです。
アジョシの主役はアジョシで、この映画は本来ミナが主人公な気がする。
ソン・ジウォンの父がチョピロにミナのこと話すシーンがあるじゃないですか。
「親は・・祖母が面倒見ていたけど祖母が亡くなってからグレた」って。
父からしたら亡き娘のジャージやら勝手に持ってっちゃったやつなんですけどね・・。
でも韓国の社会で親がいないってね、そりゃ事故かもしれませんよ、わからない。けど例えば車の事故なら同乗しているんじゃないかと。なんらか経済的な事情が背景にあるのかもしれませんよね。で、ギリギリミナを支えてきた祖母が亡くなり、そりゃグレもするって!
高校生なのに一人で生きなくちゃいけないなんてね。
警察を目指すジウォンは親友。最後の理解者だったのかも。
その父の痛みがわかるから、自殺騒ぎの日にそこにもいた。
政府も動きが遅い中、懸命に潜ってジウォンを助けようとしてくれたボランティアダイバーが入院すればなんとかして金を贈る。
妊娠させられた上、頼る人がいない友達をなんとかしようとする。
(これ、すぐに見抜くピロの奥さんはさすがです‼️)
・・たぶん本来行政の仕組みや、金のある人や、警察など公務員が支えるべき。
最後の最後まで私利私欲で自分を翻弄し、目の前でその大人の最低っぷりを見せつけられたミナは遂に、遂に絶望するわけですよね。
そしてようやくチョピロはわかるんですよね。
で、冒頭のセリフだし、幻影に向かって声をかけるラスト。
やっぱりこれ、チョピロのエピソード削ってもうちょっとミナ描いた方が良かったかな。