■概要
ある百貨店はセールを行い、女性が赤いドレスを気に入り購入するのだが、そのドレスを購入後から奇妙な出来事が起こり始める…。
■感想(ネタバレなし)
"消費者としてこの作品を社会風刺的プリズムに当てはめようとするのを否定します。なぜなら厳格的な非現実と現実の差異をあなたは楽しめるはずだからです。"
えー何を言ってるかわからないと思いますが、登場人物の発言雰囲気を借りるとこんな表現になる映画です。
少し舐めれば「こいつぁ上物のA24だぜッ」と気づくレベルの前衛的な映画です。
流石あの会社が惚れ込んだ監督、よくまぁこんな変態を次から次に見つけてこれるもんだと感心できます。
悪夢のような世界観がディヴィット・リンチのようで、資本主義的な消費社会の風刺かと思いきや…。
監督自身は社会風刺的なものを描いたつもりはなく、ひどく現実主義で現実に味わった経験を積み重ねて誇張した現実を描いたとのこと。だとすれば私がいるこの世界とは異なる世界にいるのではないかと疑いたくなるレベルです。
不快感が強い冗長的な日常部分をもう少し短くしてくれればありがたいのですが、おそらく登場人物をごくありふれた人間として描くために必要な要素なのでしょう。
普通の生活に赤いドレスの怪奇がコントラストを強く魅せるためなのかなとある程度納得しながら観ました。
いやほんと途中途中何を観せられているのかわからないのに、何故か続きが気になる不可思議な中毒性を感じました。
ルクス・エルテナは(私には合いませんでしたが…)あの作品が好きなら本作も好きになれる気がします。んー少し違うか、あのメタ構造を楽しむの部分は類似性はないです。前衛的映像部分だけですね。
怪作が好きなら観て損はないと思います。
私は思考こねくり回りせるので楽しめたと思います。
■感想(ネタバレあり)
・マネキン
後生大事に扱うマネキンの意味は一体なんなのか最後までわからず。
魔女のような店員たちの本体で、人間が逆に仮初の肉体だとすると異様なマネキンの丁重な取扱や、謎の儀式も理解できるかも知れない。
とりわけ気持ちの悪い老人のシーンはなんとも言えないが、デザインや芸術性なんてものは一種の自己満足でしかないという揶揄なのだろうか。
・ラスト
赤いドレスに取り殺された人間達は地下でドレスを紡ぐ。
何度となくドレスが新品になる理由は取り憑いた人間達が新しいのもを作っているからというわけか。
すぐに修繕されるか否かは、殺された人間の生産能力次第で、連続で破壊しても消滅しないのかもしれない。
・総評
私の凡庸な頭脳では、監督が言う社会風刺ではなく現実の積み重ねによる誇張はつまりは社会風刺なのでは?と理解しまう。
そのため、謎の多い噛み合ってるのか噛み合ってないのかわからない発言や、妙に改まった接客、謎の儀式でCMで呼び込みなど消費者に対しての衣服製造販売業における社会風刺に捉えられる。
噛み合わない会話はや合わないはずのサイズなど、接客された時に似合わなくても無理に薦められたりするような違和感を経験することは誰でもあるだろう。
また完成されたデザインというものは流行で流されても改めて評価され、また流行に乗ると言う風にドレスの呪いも捉えられる。
マネキンも没個性的に何にでも着回され似合う必要性のある店員を表していて、どの時代でもショーウィンドウの中で佇む代わりのある存在の象徴なのかもしれない。
謎の演出が多く、最後まで観ても伏線だったのが回収されなかったのか、伏線でもなかったのか全くわからない作風。
ぶっとんだ世界観と、考察すべきなのかすらわからない作品が観たい方にはオススメですね。