たく

パリに見出されたピアニストのたくのレビュー・感想・評価

3.0
正規の音楽教育を受けず貧困家庭で育った若者がパリの有名音大の音楽ディレクターに天性のピアニストの資質を見いだされ、6ヶ月後の国際コンクールに出場する話って‥さすがに無理あったなー。
「神童」という邦画でピアノがド素人の松山ケンイチが何故か才能だけで音大に入れちゃう無理設定を思い出したよ。
国際コンクールで課題曲がラフマニノフ2番1曲のみ、しかも第一楽章だけっていうのが舐めてんのかって感じで、これも同じく邦画の「リトル・マエストラ」で楽団の練習風景を「威風堂々」のトリオ部分だけで映画一本押し通す安易さを思い出した。
本作は演奏の吹き替え演技が下手なのも含めて邦画のB級音楽モノを連想させる作品で、吹き替え演技だけでなく裏で流れてるプロ演奏も音質が籠ってて迫力がない。最近観た「蜜蜂と遠雷」の迫力ある音響の良さとは対照的で、つくづく音楽モノの難しさを感じた。

貧困のせいで悪い友人とつるんで腐ってる若者の埋もれた才能を見出す夢破れた大人の図という描き方は、今の社会情勢を反映しててなかなか良いんだけど、音大での立場が危うくなったディレクターの起死回生の賭けみたいな身勝手さが雑音となって素直に感動できなかった。

演出で光ってたのは、マチューが恋仲となるアフリカ系の女の子の誕生パーティーに誘われてドレスコード違反で会場に入れないのが、ラストのコンクール本番で私服のまま駆けつけて演奏するのと裏返しになってたところ。
たく

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