のこ

幼い依頼人ののこのレビュー・感想・評価

幼い依頼人(2019年製作の映画)
4.5
同じ韓国作品のトガニと同じくらい目を背けたくなるシーンがあって、しかもそれが画面の外においても実際に日々起こっている出来事だからこそ、苦しくてやり切れなくて最後まで見終わるのに体力のいる映画だった。観賞後に、実際に韓国で起こった事件(漆谷継母児童虐待死亡事件)を基に作られたと知った。

映画を観るに、韓国の児童福祉館(日本でいう児童相談所)の権限は弱く、親に拒まれれば子供に干渉できない点で児童福祉における現状は日本と同程度のように感じた。子供にとって両親の下で育つことが大切だという認識は当然だとは思うけど、救われなかった命や踏み躙られた尊厳を報道で知るたびに、やはりもっと児童相談所の強行執行的権限を強化できないものかと思う。

そうしたマクロな改革はもちろんのこと、ミクロな視点から社会を変えるために自分たちに出来ることを考えることもまた重要だと思う。
2年ほど前にニュースで見た。南青山で児童相談所の建設が近隣住民の反対によって断念されたこと。「児童相談所で育つ子どもたちなんて何をしでかすか分からない」「自分の子どもに関わらないでほしい」という大人の声だ。生まれもって特権を持ち、そして自分が特権を持っていることに微塵も気付かない者の愚かな声によって、子供たちの居場所が奪われていくなど絶対にあってはならないこと。自分たちの意識から変えないとダメだと思った。
また、今はシングルマザーの元へ毎月食材を届ける支援というのもあるようで、父も今年の7月からそれを始めたらしい。金銭的困窮が心の余裕を奪っていくのは明白だから、こういった活動で育児に関わる母親(父親)を支援することは子どもの未来を守ることにも繋がると思う。

周囲にアンテナを張ることもそうだし、この映画やニュースを見てただ憤るだけじゃなく、自分にできることを小さなことからやっていきたい。
のこ

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