ノラネコの呑んで観るシネマ

幼い依頼人のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

幼い依頼人(2019年製作の映画)
4.5
ロースクールを出て就職に失敗したチョイ星野源似のイ・ドンフィが、腰掛けのつもりで児童福祉局に務め、継母から虐待を受けている姉弟と出会う。
その後主人公は法律事務所に移り、二人を放ったらかしに。
ところが虐待の結果弟が殺されてしまい、姉が自分がやったと自白する。
実際に起こった虐待事件がモデルになっていて、継母役のユソンのホラー演技も凄まじく、観ていて思わず目を剃らせたくなるリアリティ。
しかし現実の事件のあらましを調べてビックリ。
映画の描写が生ぬるく感じるほど、凄惨極まりない暴力が幼い子供に向けられていた。
日本で観ると、どうしても結愛ちゃん事件を思い出してしまうのだが、子どもの命を奪ってもなお、継母が自分のやったことは「しつけ」が行き過ぎただけだと大真面目に信じ込んでいるのも共通。
継母自身が母親の愛を知らず、夫の無関心もこの種の虐待事件の典型的な病理。
本作中で唯一のフィクションである主人公のキャラクター設定が、「無垢なる証人」のチョン・ウソンにそっくりなのはちょっと気になるが、大人のことなかれ主義こそが虐待を助長するという普遍的事実が真摯に描かれた力作。
実際の事件の姉には、映画同様幸せになって欲しいよ。