あらんすみしー

はちどりのあらんすみしーのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
4.0
相識満天下 知心能幾人

中学2年生。
その時は言語化なんて到底できそうもないが確かにそこにある生きづらさ。

その時代に感じる揺らぎや抑圧をすべて個人の痛みとして描きながら、その視線を通して社会の痛みである、と示唆する。

正解不正解、白黒、正義不正義を描かず、人の多面性と複雑さを徹底して描き、役者に号泣させなくても哀しみを演出してみせる監督の手腕。

だれしも輝きたい。
それと同時に、自分がそんな存在になどなれはしない、とどこかで感じている。

私も輝く存在になれるか?という手紙の問いに対してきっとヨンジ先生は「きっと輝けるよ」なんて書いたりしないだろう。ウニを対等に見つめているからこそ。どんな返事を彼女は書くだろう。読んでみたかった。決して読むことはできない、という哀しみが後を引く。

自分を嫌いになることはあるか、と尋ねたあとのシーンがとても好きだった。無力でも、自分の身体の一部を動かすことはできる。

特別な存在じゃなくても、絶望しないで生きてゆける世界がいい。